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クリニック経営 成功への道

クリニック開業資金を親から借りる/もらうときの税務上の注意点

クリニック開業資金を親から借りる/もらうときの税務上の注意点

はじめに:「親からのお金」には2つのパターンがある

「開業資金が足りないから、親に少し借りよう」

「子供の開業のお祝いに、まとまったお金を渡したい」

クリニックの開業準備を進める先生、またはそのご両親から、このようなご相談はとても多いです。

親から受け取る資金には、大きく分けて2つのパターンがあります。

  1. ①「借りる」(金銭消費貸借) → 後で返済する約束で受け取るお金
  2. ②「もらう」(贈与) → 開業祝いなど、返済を前提としないお金

どちらも「家族間のことだから問題ない」と思われがちですが、どちらのパターンも税務上のルールが厳然と存在します。特に②の「もらう」ケースは、「お祝い金だから税金はかからない」と思い込んでいる先生が非常に多く、税務調査で初めて贈与税の存在を知って、多額の税金が課せられて青ざめる、ということが実際に起きています。

特にクリニックの開業では、初期費用として数千万円規模の資金が動きます。親から資金の一部を贈与してもらうと、その金額が年間110万円を超えたら贈与税がかかります。贈与税の税率は最高55%。1,000万円を贈与と認定されれば、それだけで177万円以上の税負担が生じることになります。

本コラムでは、医療専門の平井公認会計士事務所が、親から開業資金を受け取る際の「借入」「贈与」それぞれのパターンにおける税務上の注意点と、賢い活用方法をわかりやすく解説します。

まず知っておきたい:「親からもらう」場合も贈与税がかかる

「子供の開業のためにまとまったお金を渡してあげたい」というご両親の想いは、とても自然なことです。しかし、親から子へお金を渡すことは、金額によっては贈与税の課税対象となります。

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。1年間(1月1日~12月31日)に受け取った贈与の合計が110万円以下であれば非課税ですが、それを超える部分には贈与税がかかります。

贈与税の税率(特例税率)

贈与税の税率は、一般税率と特例税率があります。贈与者と受贈者の関係が直系の親子の場合、親や祖父母から20歳以上の子や孫への贈与は、それ以外の贈与と比較して、税率が安く設定されています。その税率は、次の表の通りです。(特例税率の詳細は、国税庁ホームページ「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」をご参照ください)

贈与税の税率(特例税率)
基礎控除後の課税価格
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

例えば、親から開業祝いとして500万円を受け取った場合、基礎控除110万円を引いた後の390万円に対して贈与税がかかります。税率は400万円以下なので、税率15%が適用され、その金額から控除額10万円を差し引くと、贈与税は48万5,000円となります。

計算例:(5,000,000-1,100,000)×15%-100,000=485,000円

「お祝い金だから大丈夫」と申告しなかった場合、無申告加算税や延滞税まで加わります。

このように、「もらう」ことを選ぶ場合には事前にどれくらい税金がかかり、手元にどれくらい残るのかのシミュレーションが必要です。後述する「借入+毎年贈与による相殺」という賢い活用方法も含め、どのパターンが最も有利かを税理士と一緒に検討することをお勧めします。

顧問先からの相談事例:300万円の開業祝いをどう処理するか

実際に、当事務所の顧問先の先生からこのようなご相談がありました。

先生からのご相談

先月、開業祝いとして両親から現金300万円を受け取りました。税金が発生するのであれば、父と母の2人から150万円ずつ受け取ったことにすれば非課税になるのでしょうか?

この「2人に分けて150万円ずつ」というアイデアは一見すると合理的に思えます。しかし、贈与税は「受け取る側(先生)」に課税されます。父から150万円、母から150万円を受け取った場合、合計300万円を受け取ったことになり、基礎控除110万円を差し引いた190万円に対して贈与税が課されます。2人に分けても節税にはなりません。

この先生に当事務所がご提案したのは、次の方法です。

平井公認会計士事務所からのご提案

ご両親からの300万円を「開業資金の借入」として受け取り、3年間で返済する契約を結ぶ方法をご提案しました。

ポイントは、毎年の返済額(100万円)を、ご両親からの贈与(年間110万円の基礎控除内)と相殺する仕組みです。

  • 借入金額:300万円
  • 返済期間:3年間(毎年100万円ずつ返済)
  • 毎年の贈与:ご両親それぞれから年50万円ずつ(合計100万円)を贈与
  • 贈与額は基礎控除(110万円)以内のため贈与税ゼロ
  • 贈与と返済を相殺することで、実質的な現金の移動はゼロ

この方法であれば、借用書をきちんと作成した上で、毎年の贈与も110万円以内に収まるため、贈与税は発生しません。

ただし、この方法を適用するにあたっては、以下の点に注意が必要です。

  • 借用書(金銭消費貸借契約書)を必ず作成し、返済期日・金利・返済方法を明記すること
  • 毎年の贈与は口頭ではなく、贈与契約書を年ごとに作成することが望ましい
  • 「最初から返す気がなかった」とみなされないよう、返済と贈与のタイミングを記録として残すこと
  • 贈与額と返済額の相殺は「法律上の相殺」であるため、双方の合意書があるとよりよい

「どうせ返さなくていいお金だから最初から贈与でいい」と思われる方もいますが、一度に300万円を贈与すると贈与税がかかります。このように年間110万円の基礎控除を活用した分割贈与は、合法的かつ効果的な節税手段として広く使われています。

当事務所にて、借用書フォーマット提供や記録の取り方などを支援しています。同様のケースがあれば、アドバイスを含めお気軽にご相談ください。

親からのお金を「借入」として税務署に認めてもらうための5つの注意点

親から受け取るお金を「借入」として処理するためには、税務署が「本当に借入の実態がある」と認める必要があります。以下の5点を押さえてください。

注意点1:借用書(金銭消費貸借契約書)を必ず作成する

最初の、そして最も重要なステップです。「親から借りるから書面はいらない」という認識が、後の大きなトラブルを招きます

借用書に記載すべき必須事項
記載項目 内容の例
借入金額 金〇〇〇万円也
借入日 令和〇年〇月〇日
返済期限 令和〇年〇月〇日(〇年後)
返済方法 毎月〇日に〇万円を口座振込にて返済
金利(利率) 年〇%(元利均等返済、または元金均等返済)
貸主・借主の署名・捺印 双方の自署と実印

借用書は2通作成し、貸主(親)と借主(先生)が各1通保管します。さらに証拠力を高めたい場合は、公証役場で「確定日付」を取得することをお勧めします。費用は1通700円程度ですが、「この書類は後から作ったものではない」という強力な証拠になります。

ちなみに、公証役場は全国にあり、福岡市にも2箇所ございます。公証役場の場所は、日本公証人連合会ホームページ「公証役場一覧」をご覧ください。

注意点2:金利(利息)を適正に設定する

「親から借りるから利息はゼロでいい」と思われがちですが、無利息または著しく低い金利の場合、「通常の金利との差額分を贈与された」とみなされる可能性があります。

税務上の適正金利として参考にされる指標は、国税庁が毎年告示する「基準年利率」(令和7年は年0.9%前後)や市場金利です。年1.0~2.0%程度の金利を設定しておけば、通常は問題になりません。

なお、利息を受け取った親は、その利息収入を確定申告で「雑所得」として申告する義務があります。

注意点3:返済は必ず「口座振込」で記録を残す

借用書に「毎月〇日に〇万円を振り込む」と記載したなら、その通りに実行することが必須です。現金手渡しでは返済の証拠になりません。通帳の履歴こそが最も強力な証拠です。

  • 振込名義は先生ご自身の名前で行う
  • 振込の摘要欄に「〇月分返済」と記載しておく
  • 返済が一時的に遅れる場合は、親に連絡し、可能であれば書面で記録する

クリニックの開業直後は、患者様の数が少なくキャッシュフローが不安定なため毎月の返済が困難な場合があります。そのことを見越して、借用書に「開業から〇ヶ月間は元本返済を猶予する(据置期間)」と明記しておくことで、返済前の期間も「借入の実態がある」と認めてもらいやすくなります。

いつ頃から黒字になり、返済ができるようになるかの予測は、開業準備のときに立てた事業計画書を確認してください。

注意点4:「贈与か借入か」は最初に明確にする

「お祝いとしてもらったのか、借りたのか」が曖昧なまま時間が経過すると、後から税務上の整理が非常に難しくなります。

先に紹介したQ&Aのように、親から現金を受け取った後でも「借入として処理する」という方法はありますが、受け取る前に決めておく方が手続きがシンプルです。

「贈与として受け取り、年間110万円の基礎控除を活用して分割贈与にする」「借入として受け取り、毎年の贈与と相殺する」――どちらが先生の状況に合っているかを、現金を受け取る前に税理士に相談することをお勧めします。

注意点5:銀行融資との「優先順位」を間違えない

銀行からの融資の返済はきちんと行う必要がありますが、親から借りたお金であれば返済が苦しいときは返済を待ってもらいやすいものです。そのため、「銀行より親から借りた方が金利もかからないし楽」というお気持ちはよくわかります。

しかし、平井公認会計士事務所では、開業資金の調達において銀行融資を最大限に引き出すことを優先するよう強くお勧めしています。

その理由は、「余裕があるときに親に頼ると、本当に頼らざるを得ないときに頼れなくなる」からです。

クリニックの経営が苦しくなる、資金繰りが厳しくなる場面は、開業後多くのクリニックが直面します。売上が計画に届かない、スタッフが一斉に辞めた、医療機器などの設備が突然故障した、そういった緊急事態のとき、銀行がリスケ(返済条件の変更)や追加融資に応じてくれない局面が来ることがあります。そのときに頼れるのが「親」という存在です。

しかし、開業当初に親の資金を使い切っていると、「親も出してあげたいけど、もう余力がない」という状況になりかねません。いざというときの「最後の砦」を、最初から崩してしまうことになるのです。

銀行融資は、審査が通る枠をできる限り最大化して借りて、運転資金を潤沢にストックしておく。親からの資金は、銀行が動かない場面での「緊急の安全弁」として温存しておく。この順序が、クリニック経営を長期的に安定させるための鉄則です。

まとめ:親からの資金を「武器」にするためのチェックリスト

チェック項目 具体的な対応
①受け取り方を事前に決める 親からのお金が「贈与」か「借入」かを受け取る前に明確にし、税理士に相談する
②贈与なら申告を忘れない 親からの贈与の合計が年間110万円を超える場合は贈与税の申告が必要。超える場合は分割贈与の活用を検討
③借入なら借用書を作成する 金額・返済期限・金利・返済方法を明記した契約書を2通作成し、確定日付を取得
④口座振込で返済記録を残す 毎月定額・定日での振込を継続。現金手渡しは絶対に避ける
⑤銀行融資を先に最大化する 親からの資金は「最後の砦」として温存。開業当初に使い切らない

おわりに:「家族だから大丈夫」が一番危ない

税務署は、家族間の取引を疑いの目で見ます。「家族だから問題ない」という認識こそが、税務調査でのトラブルを招く最大の原因です。

一方で、正しい知識と手続きさえ踏めば、親からの資金は開業を力強く後押しする「合法的な武器」になります。贈与税の基礎控除を活用した分割贈与、借入と贈与の組み合わせによる節税スキームなど、先生の状況に合わせた最善策は必ずあります。

平井公認会計士事務所では、クリニック開業前の資金計画の相談から事業計画の作成、借用書の内容確認、銀行との融資交渉、開業後のキャッシュフロー管理や節税対策まで、一貫してサポートしています。親から開業資金を借りるときに「これで大丈夫か確認したい」という先生も、お気軽にご相談ください。

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「親からの資金をどう整理すればいいか不安」「開業前の資金計画を一緒に考えてほしい」という先生は、まずは医療専門の平井公認会計士事務所の無料相談をご活用ください。オンライン対応で福岡県内外、全国のクリニック開業をサポートしています。

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この記事の著者

平井公認会計士事務所
公認会計士・税理士:平井 恵介


医療機関・クリニック専門の経営支援・会計事務所
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