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クリニック経営 成功への道

医療法人で院長の妻の役員報酬はいくらにすべきか?

医療法人で院長の妻の役員報酬はいくらにすべきか?

医療法人を運営されている院長先生から、「妻を理事にしているが、役員報酬はいくらに設定すべきか」というご相談を数多くいただきます。医療法人化を検討されている院長先生からもご相談をいただきます。

院長先生の奥様の適切な役員報酬の設定は、税務上のリスク管理だけでなく、医療法人の財務の健全性を保つ上でも非常に重要な経営判断です。

本記事では、クリニック経営・税務に特化した公認会計士の視点から、医療法人における配偶者の役員報酬について詳しく解説いたします。

ただし、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスではありませんので、具体的な役員報酬の設定については、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

医療法人の役員とは?

まず、医療法人における役員の基本的な理解から始めましょう。

医療法人には、以下の役員が存在します。

理事 医療法人の業務執行を行う役員
理事長 理事の中から選任され、医療法人を代表する権限を持つ役員(株式会社における「代表取締役」に相当)
監事 理事や理事長の業務執行が適切か、会計処理が正しく行われているかを監督する役員

これらをまとめて「役員」と呼びます。

理事長と院長の違い

ここで「理事長」と「院長」の違いについても触れておきます。

「理事長」は、医療法人を経営する上で対外的な代表権を有する経営者としての立場です。一方、「院長」は医療機関における医療行為の責任者を指します。

大規模な病院では理事長と院長が別々の人物であることもありますが、多くのクリニックでは理事長と院長が同一人物であるケースがほとんどです。

配偶者を理事に選任する医療法人

実際、多くの医療法人では理事長(院長)の配偶者を理事に選任し、医療法人から役員報酬を支払っています。配偶者が実際にクリニックの経営や業務に関わっている場合、理事として適正な金額の報酬を支払うことは何ら問題ありません。

しかし、ここで重要になるのが「適正な金額」という点です。この報酬金額の適正さは、税務上のルールによるところが大きいです。

税務上の「過大な役員報酬」とは

税務上、役員報酬には「過大な部分は経費として認められない」というルールがあります。

ここでいう「過大」とは、その役員の職責、医療法人への貢献度、同規模の医療法人における類似の役員の報酬水準などと比較して、著しく高額である場合を指します。

税務署から、過大な役員報酬と認定されると、その超過部分は損金(経費)算入が否認され、法人税の追徴課税が発生する可能性があります。また、個人には既に所得税・住民税が課されているため、実質的に二重課税となり大きな税負担が生じます。

配偶者への役員報酬の適正額の考え方

では、医療法人において配偶者にどの程度の役員報酬を設定すべきでしょうか。

「いくらが適正なのか」――これは多くの先生が不安に感じておられるポイントです。

実は、この問いに対する答えは一律ではありません。配偶者の職務内容、医療法人の財務状況、経営のステージなど、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。

以下、税務リスクと医療法人の経営安定性の2つの重要な視点から考察いたします。

【視点1】税務リスクの観点から

配偶者が医療資格を有していない場合

配偶者が医師や看護師などの医療資格を有しておらず、主に経理や総務などの管理業務を担当している場合、年間1,000万円未満を一つの目安とすることをお勧めします。

これは法令で明確に定められた基準ではなく、当事務所のこれまでの実務経験、医科に特化した会計事務所の専門家との意見交換、税務調査の事例などから導き出した私見です。しかし、この水準を大きく超える場合、税務調査において過大役員報酬として指摘されるリスクが高まる傾向にあると考えられます。

実務上、配偶者が医療法人の経理や人事労務、受付業務の統括などを担当していたとしても、医療資格を有さず医療行為に直接従事していない場合、年間1,000万円を超える報酬は職務内容と比較して過大と判断される可能性があります。

税務調査官の視点では、「同じ業務内容の方を一般の求人で採用した場合、いくらの給与が妥当か」という基準で判断されることが多いため、この点も念頭に置く必要があります。

配偶者が医療資格を有し、実際に勤務している場合

一方、配偶者が医師や看護師などの医療資格を有しており、実際に診療行為や看護業務に従事している実態がある場合には、年収1,000万円を超える報酬であっても、過大と判断されるリスクは相対的に低いと考えられます。

この場合、同等の資格・経験を持つ勤務医や看護師の給与水準、その医療法人における業務量や責任の程度などが判断基準となります。実際に医療行為を提供している以上、その対価として相応の報酬を支払うことは合理的だからです。

【視点2】医療法人の経営安定性の観点から

税務リスクとは別に、医療法人の財務の健全性という観点からも適正な役員報酬を考える必要があります。

売上高に対する役員報酬比率の目安

まず、役員報酬をクリニックの売上高に応じて決めることをご提案します。そして、理事長と配偶者の役員報酬の合計額を、年間売上高の15~25%を目安とすることをお勧めします

例えば、クリニックの年間売上高が1億円であれば、理事長と配偶者の役員報酬の合計は年間1,500万円~2,500万円となります。

ただし、これはあくまで一つの目安です。医療法人の経費構造は、診療科目や経営方針によって大きく異なります。

「うちのクリニックは売上の30%を役員報酬にしているけど大丈夫?」と不安に思われる先生もいらっしゃるかもしれません。実は、経費構造次第では30%でも問題ない場合があります。以下で詳しく見ていきましょう。

クリニックの経費構造による役員報酬比率の調整

経費が少なく利益率が高い場合

診療材料費や人件費、地代家賃などの固定費が相対的に少なく、利益が出やすい医療法人であれば、役員報酬の比率を25%よりも高めに設定しても財務上問題ない場合があります。

経費が多い場合

逆に、高額な医療機器のリース料や診療材料費、人件費などの経費負担が大きい医療法人では、役員報酬を多く設定しすぎると医療法人の利益がマイナスとなり、資金繰りが厳しくなるリスクがあります。

医療法人として継続的に赤字が続くことは望ましくありません。安定的に黒字を確保できる範囲で役員報酬を設定することが重要です。

経営状況の健全性を測る指標

ここで、医療法人の経営状況が良好かどうかを判断する一つの指標をご紹介します。

役員報酬割合と医療法人の利益割合の合計に注目してください。

具体的には、以下の計算式で求められる比率です。

(役員報酬合計 + 医療法人の利益)÷ 年間売上高 × 100 = ○○%

この比率が高いと、クリニック経営が安定しやすいことを意味します。平井公認会計士事務所では約100件のクリニック(2026年1月時点)を担当させていただいておりますが、その実務データを分析した結果、この比率について以下のような傾向が見られます

  • 25%以上:経営状況は良好と判断できる水準
  • 30%以上:非常に良好な経営状態(目標とすべき水準)

「うちは20%しかないけど、これって悪いの?」

この比率が25%を下回っている場合は、経営効率に改善の余地がある可能性があります。ただし、開業直後で設備投資の償却負担が大きい時期などは、一時的に低くなることもありますので、経営のステージも考慮して判断する必要があります。

改善のアプローチ

この比率を高めるためには、2つのアプローチがあります。

  1. 経費の見直し
    • 診療材料費の仕入先や価格の見直し
    • 人員配置の最適化
    • 固定費(リース料、家賃など)の削減交渉
    • 無駄な経費の削減
  2. 売上の増加対策
    • 診療時間の見直し
    • 自費診療メニューの充実
    • 予防医療や健診事業の強化
    • リコール(再来院促進)システムの構築
    • Web予約システムの導入による機会損失の削減

これらの取り組みにより、役員報酬と利益の合計比率を30%以上に高めることができれば、医療法人の経営は非常に安定したものとなります。理事長・配偶者双方にとって適切な報酬を確保しつつ、医療法人にも十分な内部留保を残すことができます。理事長・配偶者双方の役員報酬と医療法人の内部留保があれば、いざという時の資金繰りができます。

なお、この分析結果は当事務所が担当する医科クリニックのデータに基づくものであり、診療科目や地域性、開業年数などの経営条件によって適正水準は変動する可能性があることをご理解ください。

経営のステージによる役員報酬の考え方

医療法人には創業期から安定期、理事長の引退期などのステージがあります。医療法人が現在どのステージにあるかによっても、適切な役員報酬の水準は変わってきます。

開業直後・借入金が多い時期

クリニックを開業したばかりで、金融機関からの借入金が多額に残っている時期は、医療法人の内部留保を厚くすることを優先すべきです。

この時期は、以下のような理由から、役員報酬を抑えめに設定することが賢明です。

  • 借入金の返済原資を確保する必要がある
  • 開業後の予期せぬ設備修繕や追加投資に備える必要がある
  • 診療報酬の入金サイクルと支払いサイクルのズレによる資金繰りに余裕を持たせる必要がある
  • 金融機関からの信用力を維持し、将来的な追加融資の可能性を残しておく

経営が安定するまでは、多くの役員報酬を得ることよりも医療法人の財務基盤を固めることを優先しましょう。

引退・閉院・譲渡が近い時期

一方、引退、閉院、またはM&Aによる医療法人の譲渡が数年以内に予定されている場合は、逆に役員報酬を高めに設定することが合理的な場合があります。

この時期には以下のような特徴があります。

  • 借入金が完済またはほぼ完済されている
  • 大規模な設備投資の必要性が低い
  • 医療法人に資金を残しておく必要性が相対的に低い

これらのことから、役員報酬が高くてもクリニックは安定経営ができます。

退職金との関係

さらに役員報酬をいくらに決めるのかで重要なことは、退職金との関係です。

国税庁の通達では、役員退職金の適正額は概ね以下の計算式で算出されます。

退職金の適正額 = 役員としての勤続年数 × 退職直前の月額報酬 × 功績倍率

この計算式から明らかなように、退職直前の月額報酬が低いと、退職金として支給できる適正額も低く算定されてしまいます。

医療法人の役員退職金は、個人所得税において非常に有利な税制優遇措置があります(退職所得控除、2分の1課税)。そのため、引退時期が近づいている場合は、役員報酬を適正な水準まで引き上げ、将来の退職金の適正額を確保しておくことが税務上有利となるケースがあります。

ただし、急激な役員報酬の増額は税務上不自然と判断される可能性もあるため、計画的に数年かけて段階的に引き上げることが望ましいでしょう。

まとめ:総合的な判断が必要

医療法人における配偶者の役員報酬の適正額は、以下の要素を総合的に考慮して決定する必要があります。

  1. 職務内容と医療資格の有無:医療資格を有し実際に医療行為に従事しているか
  2. 税務リスク:税務署から過大役員報酬として否認されるリスクを最小化する
  3. 医療法人の経費構造:売上高に対する適切な人件費率を維持する
  4. 経営のステージ:開業期、成長期、成熟期、引退準備期のいずれにあるか
  5. 将来の退職金計画:退職時期が近い場合は退職金との整合性を考慮する
  6. 資金繰りと財務の安定性:医療法人が安定的に黒字を確保できる水準か

これらの要素は個々の医療法人によって大きく異なるため、一律の正解はありません。しかし、上記の考え方を参考に、ご自身の医療法人の状況に合わせて適切な金額を設定していただければと思います。

役員報酬のご相談はクリニック専門の平井公認会計士事務所へ

詳しくご説明してきたように、役員報酬の設定は、税務リスクと経営の健全性の両面からバランスを取る必要がある、非常に専門的な判断が求められる領域です。

平井公認会計士事務所は、医科クリニックの経営・税務に特化した公認会計士事務所として、約100件(2026年1月時点)の医療法人の役員報酬設計をサポートしてまいりました

このようなお悩みをお持ちの先生は、ぜひお気軽にご相談ください。

  • 院長や妻の役員報酬を増やしたい
  • 現在の役員報酬が適正かどうか不安がある
  • 配偶者を理事に選任することを検討している
  • 引退に向けて退職金を含めた報酬設計を見直したい
  • 税務調査に備えて役員報酬の妥当性を専門家に確認してほしい
  • 医療法人の経営状況を数字で把握し、改善したい
  • 退職金を多くしたいが税務リスクを下げたい

貴院の状況を詳しくお伺いした上で、最適な役員報酬の設定方法をご提案いたします。

オンラインで全国のクリニックからのご相談に対応しています。まずはお問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。初回相談は無料で承っております。

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