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【クリニック専門】平井公認会計士事務所|医科特化の経営支援・医療法人化(全国対応)

クリニック経営 成功への道

クリニックの人件費率とは?意味と妥当な数字を解説

クリニックの人件費率とは?意味と妥当な数字をクリニック専門税理士が徹底解説

理想の医療を実現し、地域社会に根ざしたクリニックを永続させるためには、優秀なスタッフの存在が必要不可欠です。

しかし、「優秀なスタッフを雇うためには、高い給料を出す必要がある」という現実に直面します。多くの院長先生が「献身的に支えてくれるスタッフに報いたい」という情熱と、「経営を圧迫しかねない固定費」という冷徹な現実の間で、人知れず葛藤されています。

「うちは他院と比べて給料を出しすぎているのではないか?」「人件費率が適正かどうか、自信を持って判断できない」といったお悩みは、経営者であれば誰もが通る道です。当事務所でもよくご相談いただくことの一つでもあります。

クリニックで働くスタッフの人件費をどれくらいに設定すべきかを考える上で、「人件費率をどれくらいにすべきか?」ということにつながります。

公認会計士・税理士として、また19床の診療所を開設し、45年にわたり地域医療を支えてきた父の背中を見て育ち、クリニック経営の「光」と「影」を間近で見てきた私、平井恵介から申し上げれば、人件費率は単なる「経費の割合」ではありません。それは、クリニックの「生産性」「教育の質」「そして組織としての健康状態」を雄弁に物語る鏡なのです。

本コラムでは、人件費率の意味や計算式だけでなく、医科特化の会計事務所としての膨大な実務データ(当事務所が支援する約100件のクリニック比較データ)に基づき、診療科ごとの人件費率の正解、そして数字の裏に隠された「経営の急所」を、どこよりも深く、生々しく解説します。

人件費率とは?計算方法と「真の分析」のための徹底区分

人件費率とは、シンプルに言えば「売上(医業収益)のうち、どれだけを労働の対価として支払ったか」を示す経営指標です。

人件費率の計算式

人件費率(%) = 人件費合計 ÷ 医業収益(売上高)× 100%

ここで注意が必要なのは、分子となる「人件費合計」に何の金額を含めるかの範囲です。一般的には、単にスタッフに支払う月々の「額面給与」を合算したものを使うように思うかもしれませんが、それだけでは不十分です。

経営判断に用いる人件費合計の算出には、月々の給与に加え、社会保険料のクリニック負担分(法定福利費)や賞与(ボーナス)も含めて検討しなければ、実際のキャッシュフローと乖離が生じます。特に社会保険料は、額面給与に対して約15%という決して無視できない負担となります。

これを計算から漏らしてしまうと、表面上の人件費率は低く見えても、手元に資金が残らない「計算上の誤解」が生じ、院長先生が経営判断を誤る可能性があるのです。

現場の実態を掴むための「3つの区分」:なぜ区分を分けるのか

平井事務所では、経営分析の際、人件費率を以下の3つに厳密に分けて算定することを鉄則としています。

  1. 純粋スタッフの人件費率(看護師・事務・コメディカル等のスタッフ分)
  2. 医師の人件費率(常勤・非常勤医師の給与・報酬)
  3. 合計の人件費率(スタッフ + 医師)

なぜ3つの区分を分けて人件費率を計算するのかと言いますと、スタッフと医師は給与の金額が大きく異なるからです。スタッフと医師とで、それぞれ適正な人件費率が異なります。3つ目の合計の人件費率も計算する理由は、クリニック全体の経営を考えてのことです。

【経営の要:理事報酬の除外】

ここで非常に重要なのが、「理事(医師である理事を含む)の報酬は人件費率の検討には含めない」という点です。

理事報酬は、法人の利益状況や税務戦略、あるいは院長自身のライフプランに基づいて決定される性質が強いため、純粋な現場の運営効率を測る指標からは切り離して考えるべきだからです。

理事報酬は「利益の分配」に近い性格を持っており、これをコスト(経費)として他のスタッフと同じ土俵で議論すると、経営の判断を見誤ります。

医師の給与水準はスタッフに比べて圧倒的に高額です。これらを一括りにしてしまうと、「スタッフへどれだけ適切に分配できているか」「スタッフの人数が適正か」という経営者が最も知りたいはずの指標が、医師の数字に飲み込まれて見えなくなってしまうという事態を招きます。スタッフへの配分が適正かを判断するには、この区分けこそが第一歩となるのです。

人件費率は低ければ良いのか?

人件費率は、売上高に対する人件費の割合ですから、低い方が利益が多くなるので、クリニックの事情を考慮せずに、人件費率の数字だけを見て下げるように指導するコンサルタントもいます。確かに、人件費率が高くなると、利益が出にくいクリニックになるので、数字だけを見ると経営難に弱いクリニックに見えます。

しかし、人件費率を無理に下げようとして、スタッフの人数を増やさずに売上高だけを増やすと、スタッフの負担が増えて疲弊します。すると、スタッフへの思いやりを欠いた経営となり、スタッフの定着率が下がってしまう可能性があります。採用には費用がかかるので、人件費率を下げたことで採用のための費用が増えてしまっては、本末転倒です。

また、売上高をそのままに人件費率を下げようとすれば、従業員の人数を削減したり、給与を下げてしまうことになります。すると、スタッフにとっては労力の割に給料が安いクリニックと感じるため、採用で苦労することになるので、クリニックの運営が難しくなります。

このように、人件費率にはスタッフへの思いやりと経営の安定性を両立させた適切な数値というものがあることをご留意ください。

雇用創出の意義と「省力化投資」の劇的な経済効果

クリニックを開業して経営していくことは、地域社会に雇用を生み出し、スタッフの生活を支えることは、医療機関として社会的にも極めて意義深い貢献です。しかし、経営の永続性と生産性を考えれば、人件費率を適正な範囲におさめることが大切です。そこで、「1人当たりの生産性を高めるための設備投資」を戦略的に検討することもまた、経営者の重要な責務となります。

自動精算機導入の圧倒的なコストメリット

例えば、導入に300万円かかる自動精算機を検討してみましょう。これにより受付事務の業務を「1人分」省力化できるとしたら、クリニック経営に与えるインパクトはどうなるでしょうか。

  • スタッフ1人あたりの月間コスト:30万円(給与 + 社会保険料 + 賞与見合い)
  • 年間の人件費:30万円 × 12ヶ月 = 360万円
  • 20年間の人件費:360万円 × 20年 = 7,200万円

この試算によると、スタッフ1人を削減できたとしたら、20年間で7,200万円の経費削減ができます。昨今の激しい賃上げ機運や社会保険料の上昇傾向を考慮すれば、実際には1億円近いコストになるかもしれません。これだけの経費削減ができれば、クリニックの経営が安定しやすくなり、院長先生の手取り収入も増やすことができます。

仮に完全に1人減らすことができず「0.5人分」の省力化であっても、20年間で3,600万円ものキャッシュを温存できる計算になります。

300万円の投資で、20年かけて数千万円の支出を防ぐ。このように考えると、省力化・デジタル化(DX)のための設備投資は、最も確実な「経営改善の一手」として積極的に検討すべき領域なのです。スタッフには「作業」ではなく、患者様への「気配り」という、より付加価値の高い業務に集中してもらう。これこそが、投資の真の目的です。

設備投資をするときは、安易に「利益が出ているから」とか「スタッフが望んでいるから」というだけで判断をするのではなく、専門の会計士やコンサルタントに相談し、このような経営分析をして導入を検討することをおすすめします。

【診療科別】データから導き出す妥当な人件費率の目安

診療科が異なれば、診察のスピードも必要なスタッフの専門性も全く異なります。当事務所の最新データに基づき、診療科別の現実的な人件費率の数値を解説します。

① 皮膚科(保険診療メイン):20%~25%

保険診療を中心とする皮膚科クリニックは、患者様1人1回あたりの診療報酬が4,000円弱と比較的低めです。また、疾患部位が全身にわたるため、診察室での衣類の着脱介助や体位調整、軟膏処置の補助を行うので、診療に多くの時間を要します。医師一人の力では診察が回らず、スタッフの「手」と「頭数」が必要となる分、人件費率は他科より高めに出るのが標準的です。

② 耳鼻咽喉科:15%~20%

耳鼻科クリニックは、皮膚科に比べて疾患部位が頭頸部に限定されており、衣類の着脱がほとんどありません。患者様も診察椅子に座った状態で固定されるため、ユニットを用いた効率的な処置が可能です。結果として皮膚科よりも回転率を飛躍的に高めることができ、人件費率を低く抑えることが可能となります。

③ 美容皮膚科(自由診療):15%~20%

美容皮膚科クリニックは、売上単価を高く設定できるため、人件費率は低くなりやすい特性があります。しかし、昨今は以下の要因により上昇傾向にあります。

  • 高いホスピタリティ基準:容姿や接遇に高い基準を求めるため、採用コストや給与が高騰している。
  • インセンティブ制度:成果に応じた対価(歩合)を設けるケースが多く、これが人件費率を押し上げます。
  • 福利厚生の注意点:スタッフへの施術割引は実質的な人件費です。「原価」もしくは「販売価格の70%」のいずれか大きい金額以上で提供しなければ給与課税対象となる点に注意が必要です。

④ 整形外科:25%~30%

整形外科クリニックは、理学療法士(PT)を多数雇用し、運動器リハビリを収益の柱とするため、人件費率は高くなります。当事務所のデータでは、リハビリの稼働率が1%変わるだけで、年間利益が数百万円単位で変動するケースも珍しくありません。

⑤ 一般内科:20%~25%

一般内科クリニックは、慢性疾患の再診がメインとなるため、安定した人件費率で推移しやすいのが特徴です。当事務所のデータでは、人件費率が25%を超えている内科の多くが、診療単価の低さ(加算漏れ)に課題を抱えています。

⑥ 小児科:20%~25%

小児科クリニックは、処置が多く回転率は高いですが、流行期と閑散期の差が激しいため、人件費率が高くなりがちです。そのため、年間を通じた雇用管理が必要です。

⑦ 眼科:20%~25%

眼科クリニックは、検査機器を操作する視能訓練士(ORT)の確保が必要ですが、手術を行うか、眼鏡処方がメインかによって生産性が大きく変動します。手術を行う場合は、スタッフの人数が増えますが、手術単価が高い傾向にあるので、手術件数が多いと人件費率が低くなります。

⑧ 婦人科:15%~20%(不妊治療等含む場合は変動)

婦人科クリニックは、自費診療の割合や、提供する検査・処置の内容によって大きく分かれます。

ここで示した人件費率の範囲は、一般的なものですから、この範囲内であれば安心なわけではなく、クリニックによって事情が異なる場合があります。もし、現在の人件費率が妥当なのか、自院にとって最適な人件費率はどれくらいなのかを知りたい院長先生は、当事務所にてオンラインで経営診断をしているので、ぜひご利用ください。

新規採用のシミュレーション:追加雇用は「経営上の正解」か?

先生からよく次のような質問を受けることがあります。「看護師を1人(月人件費40万円。賞与見合いや社会保険料含む)追加で雇おうと思うのですが、経営上問題ないでしょうか?」

このような場合は、以下のパターンでシミュレーションを行い、ロジカルに考えて判断するとよいです。

パターンA:人手不足・スタッフの疲弊感解消が目的の場合

現状:月売上800万円/月、スタッフ人件費200万円/月(人件費率25%)

追加雇用後:売上800万円/月(不変)、人件費240万円/月、人件費率30%

目標とする人件費率が25%~30%の場合、上限ぎりぎりのラインになります。経営判断としては「スタッフの定着やサービス維持のための投資」となりますが、もし「パート(月人件費20万円)」の採用であれば、人件費率は27.5%となり、より安全圏での運用が可能です。

パターンB:採用により患者数の制限を解除できる場合

現状が看護師不足で患者数を制限しており、採用により「1日10人」多く受け入れられるようになる場合を考えます。

現状:売上800万円/月、スタッフ人件費200万円/月(人件費率25%)

1人外来単価5,000円 × 10人(午前午後で5人ずつ) × 20日 = 月売上増加100万円

追加雇用後:売上900万円、人件費240万円、人件費率26.6%

雇用前(25%)より比率はわずかに上昇しますが、売上という「分母」が大きくなり、現場の負担も減るため、非常に健全な「攻めの投資」と言えます。

このように、人件費を「率」だけでなく「増分利益」で捉える視点が重要です。

平井式「賞与財源算定」:スタッフの意識を変革するロジカルな分配

多くのクリニックでは、賞与を「基本給の◯ヶ月分」と固定で決めています。しかし、この手法には、売上が減りスタッフが増えた際、人件費率が急上昇し、経営を圧迫するという致命的なリスクがあります。

平井事務所では、経営の透明性を高め、スタッフを「経営のパートナー」へと変革するために、独自の「賞与財源算定」を提唱しています。

平井式:賞与財源の算出フロー

  1. 実績の把握:年間の確定した売上実績、既払いの給与、社会保険料(法定福利費)の実績値を正確に算出します。
  2. 現状の人件費率を算出:賞与を出す前の段階で、人件費率が何%に達しているかを確認します。
  3. 目標との差分を算出:あらかじめ設定した「目標とする年間人件費率(例:25%)」と実績の差を計算します。
  4. 賞与総額の決定:目標比率に収まる範囲内で、売上から算出された余剰額を「賞与財源」と定めます。
  5. 社保負担の考慮:この財源から、さらにクリニック負担の社会保険料(給与の約15%)を除いた残額を、スタッフ全員で分け合う分配総額とします。

「自分たちの賞与は、自分たちの働き方が決める」

この算定方式を導入し、スタッフにその仕組みを周知することが最も重要です。

例えば、スタッフから「忙しいから人を増やしてほしい」という要望が出た際、院長先生はこう説明できます。

「人を増やして現場の負担を減らすのはいいけれど、そうすると人件費の実績が増える。結果として目標比率に達するのが早まるから、次の賞与財源は今より減ってしまうことになるよ。それでもいいかな?」

少ない人数で工夫して価値(売上)を上げれば賞与は増え、安易に人を増やせば自分たちの賞与は減る。この「痛み」と「喜び」を共有することで、スタッフは「どうすれば効率的に動けるか」「どうすれば患者様に喜んでいただき、再診に繋がるか」を自ら考えるようになります。

スタッフの育成は、精神論ではなく、数字に基づく経営参画意識の変革こそが、安定経営の基盤です。

クリニック経営支援ができる税理士の選び方

人件費の悩みを相談した際、明確な基準を示さずに「人件費率が高いですね。削りましょう」としか言わない税理士は、医療現場の現実に疎いと言わざるを得ません。人件費率を無理に削った結果、クリニック経営がより一層難しくなることもあります。

このコラムで解説したように、診療科やクリニック特有の事情を考慮した正確な数字でロジカルに説明してくれる税理士を選ぶことが大切です。

理想的なパートナー税理士の基準

  • 診療科別の「生きた」データを持っているか:全国平均ではなく、先生と同じ診療科で成功しているクリニックのリアルな数字を知っているか。
  • 「分母(売上)」を増やすアドバイスができるか:人件費を削るのではなく、正当な診療報酬加算の漏れを指摘し、健全に売上を伸ばす提案ができるか。
  • 「未来の予測」ができるか:単なる事後報告ではなく、半年後の賞与や来年の税金を見据えた予測や経営改善のアドバイスができるか。

このような条件を満たしていない税理士と契約していて不満や不安をお持ちであれば、ぜひクリニック専門の税理士にご相談ください。

まとめ:理想の医療を支える「戦略的な経営力」

人件費率は、院長先生の「スタッフへの思いやり」と「経営者としての冷徹な財務判断」が交差する、最も重要な経営指標の一つです。「スタッフを大切にしたい、でもクリニックの未来も守らなければならない」その葛藤こそが、先生が真剣に地域医療と向き合っている証です。

もし、現在の人件費率に不安がある、あるいはスタッフが納得する賞与体系を構築したいと切に願っておられるなら、ぜひ一度私にご相談ください。全国約100件のクリニックを支え、数多の経営課題を共に乗り越えてきた「数字の力」と「現場感覚」で、先生が安心して診療に専念できる環境を全力でサポートさせていただきます。

【平井公認会計士事務所・無料経営診断のご案内】

貴院の現在の決算書や試算表から、人件費率の妥当性を分析し、具体的な改善ロードマップを洗い出します。オンラインでの無料相談も承っております。

※ 当事務所は医科特化のため、歯科の先生は原則対応しておりませんのでご了承ください

お問い合わせ・無料相談の予約はこちらから

092-707-3678

(受付時間:9:00~17:30 土・日・祝を除く)

この記事の著者

平井公認会計士事務所
公認会計士・税理士:平井 恵介


医療機関・クリニック専門の経営支援・会計事務所
(福岡県福岡市/オンライン全国対応)

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