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【クリニック専門】平井公認会計士事務所|医科特化の経営支援・医療法人化(全国対応)

クリニック経営 成功への道

クリニックの経営管理でおさえるべき数字とは?

クリニック経営で本当に追うべき「数字」の正体。損益計算書に惑わされない、持続可能な医療経営のための羅針盤

はじめに:なぜ「利益」が出ているのに、思うように現金が増えないのか

「税理士からは『順調に黒字です』と言われている。しかし、日々の診療に追われ、ふと通帳の残高を確認すると、利益の額ほどには現金が増えている実感が湧かない……」

多くの院長先生が抱えるこの違和感。実は、その直感こそが経営において最も重要なシグナルです。

公認会計士・税理士として、そして医療一家で育ち、クリニック経営の「光と影」を間近で見てきた私、平井から申し上げれば、損益計算書(P/L)上の「利益」と、クリニックの通帳の「現金の増え方」は、一致しないのが当たり前です。

損益計算書とは、毎月もしくは期末で税理士から送られてくる決算書(財務諸表)の一つです。

損益計算書に記載されている利益は、あくまで計算上の成果であり、現金は手元にある実効的な資産です。この両者のズレを正しく理解できていないと、表面上は黒字でも資金繰りに窮するリスクを見逃してしまいます。

本コラムでは、医科クリニック経営に特化した当事務所が、院長先生が今すぐ把握すべき「羅針盤」となる数字を、実戦的な視点で詳しく解説します。

「損益計算書の内容は難しい用語が多いのでわからない」とおっしゃる先生は多いのですが、決算書の見方は、一度覚えてしまったら一生ものですし、クリニックを安定経営したいとお考えの先生には、必須のものです。丁寧に紐解いて解説するので、がんばってついてきてください。

全ての土台、「経常利益」の真の意味を理解する

まず、経営の健康状態を示す基礎指標が「経常利益(けいじょうりえき)」です。損益計算書の項目の中に「経常利益」という項目が見つかるはすです。

【用語解説:経常利益とは?】

経常利益とは、クリニックが通常の診療活動を通じて、毎月、安定的に稼ぎ出す力のことです。計算式は次の通りです。

経常利益 = 医業利益(売上 - 経費) + 営業外収益 - 営業外費用

ここで少し補足をします。

  • 医業利益:医業利益とは、本業の診療活動で得た利益のことで、営業利益ともいいます。医業利益の計算式にある売上とは、診療報酬や物販などで得た売上の合計金額です。経費は、ディスポなどの患者さんを診療するときに必要となる変動費と、患者さんの数に関係なくかかる家賃や人件費などの固定費を足したものです。
  • 営業外収益:本業の診療以外で入ってくるお金(受取利息や助成金など)です。
  • 営業外費用:本業以外で出ていくお金(銀行借入の「利息」など)です。

クリニックの経営支援をしていて、よく先生から「節税のために利益を圧縮したい」というお話を伺います。経常利益はクリニックの「体力」そのものです。

利益が出なければ、将来の医療機器の更新も、スタッフの待遇改善も、万が一の備えもできません。経常利益が常にプラスであることは、経営を永続させるための「必要条件」です。もしここが不安定なら、それは経営の構造自体を見直すべきサインです。

キャッシュフローを把握するための「3つの重要指標」

キャッシュフローとは、現金の動きのことです。クリニックが安定経営できているかどうかは、経常利益がプラスなのかではなく、現金が残っているかどうかです。

損益計算書では経常利益がプラスになっていたとしても、キャッシュフローで現金が足りなくて倒産するという、一見すると不思議な倒産理由があります。このような倒産のことを、黒字倒産といいます。

損益計算書には載っていない、しかし経営を左右する「現金の動き」を可視化するための指標を解説します。

① 経常利益 + 減価償却費 = 「今期、本業で稼ぎ出したお金」

一つ目の指標は、「経常利益 + 減価償却費」がプラスであることです。

ここで登場する「減価償却費(げんかしょうきゃくひ)」について説明します。

【用語解説:減価償却費とは?】

例えば、高額な医療機器などの固定資産を導入した際、その年に一括で費用にするのではなく、耐用年数にわたって分割して毎年費用計上する仕組みです。

その耐用年数は、実際の耐用年数ではなく、国税庁で決められた年数を適用します。国税庁ホームページ「主な減価償却資産の耐用年数表(PDF)」によると、例えば固定式のレントゲン機器は6年で按分します。減価償却については、別途コラムで解説したいと思います。

さて、ここで重要なのは、購入代金はリースでなければ最初の年に代金を支払っているので、減価償却費は「帳簿上は経費として引かれるが、実際にお金は出ていかない」という点です。

つまり、「経常利益 + 減価償却費」という指標は、過去の投資の影響を除外した、「今期(今月)の本業による活動で、どれだけ現金が増えたか」を表します。これがプラスであれば、ひとまずは現金を創出する構造が維持されています。

② 借入金返済という「隠れた負担」を可視化する

さらに重要なのが、「(経常利益 + 減価償却費) - 借入金の元金返済額」という視点です。

ここが多くの院長先生が「お金が残らない」と感じる最大の原因です。

借入金の元金返済額は、決算書の一つ「キャッシュフロー計算書」の財務キャッシュフローの項目として記載されています。借入金の元金返済は、現金を銀行に返済しているので、現金が減っているので「△」になっています。

実は、銀行への借入金の「元金返済」は、損益計算書での経費になりません。そして、税金は「元金返済前の利益」に対してかかります。つまり、利益から税金を支払った後の純利益や、手元に残った資金の中から、元金を返済しなければならないのです。

この数式の結果がマイナスになっている場合、「利益は出ているのに、以前から持っていた預金を切り崩して借入金を返している」状態にあります。この数字をプラスに保つことこそが、倒産しない経営の絶対条件です。

③ 債務償還年数:その借入金は「返せる範囲」か?

次に、借入総額の妥当性を測る「債務償還年数(さいむしょうかんねんすう)」をチェックします。

【用語解説:債務償還年数とは?】

債務償還年数とは一言で言えば、「今のクリニックの稼ぎで、借入金を全て返すのに何年かかるか」という指標です。計算式は、

債務償還年数 = 借入金残高 ÷ (経常利益 + 減価償却費)

目安として、10年以内であることを目指してください。医療機器の更新サイクルを考えると、10年を超えて借入金が残る状態は、経営の柔軟性を損ないます。

なぜなら、医療機器は10年毎に借入金で購入することが多いのですが、元金の返済が終わってから新しい融資を受けないと、返済が苦しくなるからです。

そのため、「10年以内に自力で完済できる実力があるか」という視点は、銀行が融資を判断する際の最重要項目でもあります。

個人事業主特有の落とし穴:「生活費」という変数を忘れない

ここで、医療法人ではない「個人開業」の先生に特に注意していただきたいポイントがあります。

法人化すると、先生の生活費は給料として支払うことになりますが、個人事業主は最後に残った利益が先生の生活費になります。そのため、個人事業主の場合、院長先生自身の生活費は、損益計算書の「経費」には一切現れません。

たとえ上記②の「(経常利益 + 減価償却費) - 借入金の元金返済額」がプラスであっても、そのプラス幅以上に院長先生が生活費としてクリニックの口座からお金を引き出していれば、通帳の残高は確実に減っていきます

帳簿上は黒字になっていて、税理士が「経営は順調ですよ」と言っても、通帳にお金がないこともあります。その理由はここにあるかもしれません。

税務署に個人事業主として申告している先生は、「生活費としていくらまで使えるのか」を、返済計画と照らし合わせて把握しておくこと。これも立派な経営管理の一つです。

売上を因数分解し、相対的比較で「自院の立ち位置」を知る

クリニック経営の良し悪しは、「売上が増えた・減った」と一喜一憂するだけでは不十分です。売上は「数 × 単価」で構成されます。当事務所では、レセプトデータに基づき、以下の項目を「当月・前年同月・前前年同月」の3点で比較分析することを推奨しています。

数の分析:患者さんは増えているか、頻度はどうか

  • 延べ患者数とレセプト枚数
  • 新患割合と新規患者数

慢性疾患を主とする内科の場合、再診割合が高くなる傾向にあり、安定経営になりやすい傾向があるので、患者さんの名簿の数が大事になります。

それに対して、耳鼻科や皮膚科などの慢性化しにくい診療科では、新患割合が10%以上維持されているかを確認してください。もしそれを下回っているなら、WEB広告の最適化、電柱広告の検討、あるいは口コミ評価対策など、新患流入を強化する施策を検討すべき時期です。

単価の分析:必要な診療を適切に行えているか

  • レセプト単価と一人一日あたり単価

売上は「一人の患者さんが月に何回来ているか」という頻度にも因数分解できます。「患者数は増えているが、実は単価が下がり、結果的に保険点数(売上)が下がっていないか」を三期比較で追うことが不可欠です。

同じ診療科の他院との相対比較

さらに、平井公認会計士事務所では、自院の時系列分析だけでなく、同じ診療科の他院との相対的比較を提供しています。

「同診療科の他院と比べて、うちのレセプト単価はどうなのか?」「来院頻度や原価率、人件費率は適正か?」自院のデータだけでは気づけない課題も、多くの医科クリニックを支援する当事務所のベンチマークデータと比較することで、今後の取り組むべき経営課題がより明確に浮き彫りになります。

財務の安全性を高めるステップ:実質無借金への道

クリニック経営における大きなリスクは、「利益が出ないこと」と「支払日に現金がないこと」の二点です。これらを克服し、強固な財務体質を作るための具体的なステップを解説します。

① まずは「預金残高 > 借入金 ÷ 2」を目指す

つまり、借入金2に対して預金残高が1以上になる状態です。開業直後は、借入金が5,000万円や1億円といった大きな金額になるので、この指標には程遠いものですが、利益が順調に伸びてきたら、まずは「預金残高 > 借入金 ÷ 2」を目標にしてください。

少し経営が上向いて利益が出たからといって、安易に高級車や絵画など、経営に直結しないものに資金を投入したり、役員報酬や生活費を過度に取り出したりすることは禁物です。

借入金は「有利子負債」といって金利が発生するので、なるべく早く返済できることが、財務の安定性を高めますが、いついかなる時も早く返済すべきかというとそうではありません。

なぜなら、借入金から生じる金利(コスト)よりも、新たな医療機器への投資した方が高いリターンが得られる場合や保険会社に預けることでの高い運用益が得られる場合があるからです。

特にコロナ禍での福祉医療機構(WAM)からの借入金は、利率が借入開始から5年間は0.15%、それ以降は0.3%という非常に低金利ですので、無理して繰り上げ返済せず、それを今後必要な投資などに活かすことを検討してください。

経営とは関係のないムダなものを購入する前に、まずは財務の安全性や必要な投資を優先すべきです。そのことが、より地域貢献のできるクリニックになっていく道でもあります。

② 「預金 = 借入金(実質無借金)」から「預金 > 借入金」へ

次の指標は、預金と借入金が同額になる「実質無借金」の状態です。

医療機関は設備投資産業と言って、基本的に高額な医療機器を借入金で購入し事業の利益を得るという産業です。開業から5年、10年も経てば、内装のやり直しや医療機器の買い替えが必要になります。特に医療機器は5年も経てば保証が切れ、買い替えを余儀なくされるケースが多く、そこでまた借入が増えるのが一般的です。だからこそ、好調な時期に「預金 > 借入金」の状態を作っておくことが、将来の設備更新への備えとなり、財務的な安心感に繋がります。

また、将来ご子息などにクリニックを承継する際にも、負債の少ない状態で渡せることは大きなメリットとなります。利益が多く出ているクリニックであったとしても、借入金の残高が多いと、ご子息から「借金を背負いたくない」と事業承継を断られるケースも少なからずあります。

診療科別・コスト構造の最適化

医科特化の当事務所の知見から、人件費率と売上原価率の適切なコストバランスの目安を提示します。

① 人件費率:職種構成による違い

人件費率とは、売上高に対するスタッフの人件費です。人件費率が高いと、人件費の高さが経営を圧迫している可能性があり、診療科によって標準的な割合があります。

非常勤医師や理事報酬を除いたスタッフの人件費率は、20%程度が標準です。一方で、整形外科などの場合は、理学療法士が比較的高い給与水準であることや、放射線技師が在籍していることなどから、30%程度が目安となります。

② 売上原価率:診療スタイルを映し出す

患者さんを診察すると、医薬品、血液検査装置の試薬やディスポ製品などの仕入れの費用がかかります。その費用のことを、売上原価といいます。売上原価率とは、売上高に対する売上原価の割合です。

売上原価にも標準的な割合があります。この割合が多すぎる場合に、何か問題があります。

  • 院内処方のクリニック:おおよそ15%程度
  • 生物学的製剤を使用する科:30%程度
  • 保険診療メインの皮膚科:10%以内が目安

資金ショートを防ぐ「2ヶ月分の予備資金」

クリニックが黒字になるためには、当然のこととして利益を出す必要があります。利益を出すことと並行して、「支払日に現金がどれくらいあるか」を確認してください。社保(支払基金)や国保(国保連合)からの診療報酬の入金は毎月20日頃ですが、スタッフの給与や借入金の返済はそれ以前にやってくる場合もあります。

それらの支払いができなければ、クリニックは倒産ですから、支払日に出ていく金額と現金がどれくらいあるかを把握しておくことがとても大切です。

この一時的な払い込みで資金が枯渇しないための防衛ラインが、「預金残高 > 販売費及び一般管理費(固定費合計)の2ヶ月分以上」です。

販売費とは広告宣伝費などの費用のことです。一般管理費とは、テナント料や電話代などの費用のことです。これらにスタッフの人件費も加えた金額が、毎月固定でかかる固定費です。

予備資金を常にキープすることで、不測の事態にも慌てない、健全な経営が可能になります。

むすび:数字を味方につけ、医師としての誇りを守る

決算書の数字は、嘘をつきません。財務状態がクリアになり、現金の動きがコントロールできているとき、院長先生は初めて「お金の心配」から解放され、診療に全神経を注ぐことができます。

このような現金の動きを把握してくれて、クリニックの現在の状況が信号機で言う何色なのか、赤信号になりそうなときの対策はどうするべきなのかをアドバイスしてくれる「軍師」がいれば、クリニック経営は安定しやすくなります。

平井公認会計士事務所は、単なる税金を計算するだけの税理士ではありません。先生の「軍師」として、他院との比較データや緻密なキャッシュフロー分析を通じて、5年後、10年後の勝利や先生のライフプランの実現を確実にするための伴走をいたします。ぜひ、当事務所とともに「日本一の経営」を目指し、一歩踏み出してみませんか。

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この記事の著者

平井公認会計士事務所
公認会計士・税理士:平井 恵介


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