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クリニック経営 成功への道

クリニックの売上が黒字になる1日平均患者数

クリニックの売上が黒字になる1日平均患者数

経営者が知っておきたい現実的な目安と考え方

クリニックを開業された先生方にとって、「1日の平均患者数」は黒字経営を目指す上で重要な指標の一つです。特に開業初期は、1日何人の患者さんが来院すれば黒字になるのか、開業をお考えの先生は不安に感じておられる方も多いと思います。

しかし、1日の患者数の目安は、クリニックの診療科目や規模によって異なるので、インターネット上やAIの情報や知人の先生の話だけでは判断しづらく、明確な基準が見えにくいのが実際のところです。

今回のコラムでは、クリニック経営に特化した会計事務所として、日々医療機関の数字を見ている立場から、黒字ラインとなる患者数の考え方をできるだけ分かりやすく解説します。「思ったより少ない」と感じる先生もいれば、「もっと努力が必要だ」と気持ちが引き締まる先生もいるかもしれません。いずれにせよ、数字を正しく理解することが、健全なクリニック経営の第一歩です。

1日平均患者数の黒字ラインは何人?

1日平均患者数の黒字ラインは診療科目、家賃、立地条件等によって異なります。

無床クリニック、院外処方を前提とした診療科目別の黒字ラインの患者数の大まかな目安は次の表のとおりです。

診療科目 黒字ラインの
患者数の目安
内科 約20~30人/日
耳鼻科 約40~50人/日
皮膚科 約30~40人/日
整形外科 約80~100人/日
小児科 約40~50人/日
心療内科 約20~30人/日

さて、クリニック経営では回転率という経営用語があります。回転率とは、1日で患者さんをどれくらい診療しているかの数のことです。上記の表では、例えば、皮膚科や耳鼻科は回転率を高くして、多くの患者さんを診療しないと黒字になりません。患者さんを診察したときの単価が比較的低単価であるため、ある程度の患者数が必要になります。

一方で心療内科は診療時間が長いものの、単価が高いため少人数でも採算が合うことがあります。そのため、黒字になる患者数が少なくて済みます。

重要なのは、自院の診療単価と経費構造に合わせて黒字ラインを把握することです。他院の数字をそのまま当てはめるのではなく、自院に最適化したシミュレーションが必要です。

もし、福岡県での開業を目指されている先生で、黒字ラインのシミュレーションしたい方がいらっしゃいましたら、平井公認会計士事務所までお気軽にご相談ください。簡易シミュレーションは無料で行っています。

黒字ラインを決める各種費用を理解する

黒字ラインの患者数を考える際に、次の各種費用について意味を理解をしておく必要があります。

  • 変動経費
  • 固定的経費(減価償却費除く)
  • 減価償却費
  • 借入金の元本返済額
  • 診療単価

変動費とは

「変動経費」とは、売上に応じて変動する経費のことです。売上に応じて比例するように増えていく経費と理解してよいと思います。略して「変動費」とも言われます。例えば、診療材料費や薬品費、検査委託費が変動経費に該当します。

固定的経費(減価償却費除く)とは

「固定的経費(減価償却費除く)」とは、売上の増減によらず固定的にかかる経費のことです。略して「固定費」とも言われます。例えば、テナントの家賃や医療機器の保守料、人件費などが固定的経費に該当します。

減価償却費とは

「減価償却費」とは、シンプルに表現すると、「高いものを買ったときのお金を、一度に全部経費にせずに、按分して少しずつ経費にしたもの」です。減価償却費という経費は、お金を出した会計年度と経費処理された会計年度が異なることになります。例えば、レントゲン装置を購入するとなると、とても高い費用がかかりますが、経費はレントゲンの減価償却年数で割り、その按分した金額が減価償却費として経費処理されます。

借入金の元本返済額とは

「借入金の元本返済額」とは、銀行などの金融機関から借りた借入金の返済額のことです。クリニック通帳から銀行へお金を返済するのでお金は出ていきますが、税金を計算する上で「経費」にはなりません。借入金の元本返済額が経費になると思っている方がいますが、違います。借入金の元本返済をたくさんしたからといって経費が増えることにはなりませんので節税、つまり税金を少なくすることはできません。

診療単価とは

「診療単価」とは、先生に対してご説明するまでもありませんが、診療をしたときの患者さん1人当たりの診療報酬のことです。診療単価の金額は、診療科によって異なります。また同じ診療科であっても、医療機器や検査によって診療単価が異なります。黒字ラインの患者数を計算する上で、自院の平均的な診療単価を把握しておく必要があります。

これらの数値を基にして、黒字ラインの患者数を計算します。

黒字ラインの患者数の算定方法(簡易版)

「黒字ラインの患者数」を「支出より収入が大きくなる時の1日当たりの患者数」とします。

1日の黒字ライン患者数を考える際には、「固定的経費÷1人当たり診療単価」というシンプルな式で考えるとイメージしやすくなります。

黒字ライン患者数=(月間固定費 ÷ 診療日数)÷1人当たり単価

たとえば、以下のようなケースのクリニックを想定します。

  • 月間固定費(家賃、医療機器保守料、人件費等):2,000,000円
  • 診療日数:20日
  • 1人当たり診療単価:4,000円

この場合の黒字ラインは、上の計算式に当てはめると次のようになります。

1日あたり必要売上=2,000,000円÷20日=100,000円
必要患者数=100,000円÷4,000=25人

つまり、1日25人程度で黒字ラインに到達する計算です。1日に25人以上を診察すると黒字になり、それ以下ですと赤字です。

黒字ラインの患者数の算定方法(詳細版)

※ やや複雑な記述ですので読み飛ばしていただいて結構です。

医師が個人事業主としてクリニックを開業したパターンを例に、黒字ラインの患者数の詳細な算定方法を考えてみます。

会計では一般的に下記の算式が成り立ちます。

① 売上-変動経費-固定経費(減価償却費を除く)-減価償却費=税引前利益
② 税引前利益×税率=税金

売上からさまざまな費用を引いたら、税引前利益になります。ここで、「売上=診療単価×患者数」ですので、上記の式は次のようになります。

① 診療単価×患者数-変動経費-固定経費(減価償却費を除く)-減価償却費=税引前利益
② 税引前利益×税率=税金

ここで黒字ラインの患者数は

③ 診療単価×患者数-変動経費-固定経費(減価償却費を除く)-税金-借入金の元本返済=0

が成立する時の患者数になります。つまり、収支が0のときの患者数になります。

ここで、

診療単価p
患者数n
変動経費=売上×変動費率=p×n×v
固定的経費(減価償却費を除く)F
減価償却費G
税前利益ZM
税率t
税金ZK
借入金の元本返済額K

として上記計算式①②③を書き直すと

① p×n-p×n×v-F-G=ZM
② ZM×t=ZK
③ p×n-p×n×v-F-ZK-K=0

③を展開すると

p×n-p×n×v-F-Zm×t-K=0
p×n-p×n×v-F-(p×n-p×n×v-F-G)×t-K=0
n=F(1-t)-Gt+K/p(1-v-t+vt)

となります。この式で算出された患者数が、黒字ラインの患者数となります。

具体的に、次の数値を代入して、黒字ラインの患者数を計算してみましょう。

診療単価P=4,000円
患者数n
変動経費=売上×変動費率4,000円×n×15%
固定的経費(減価償却費を除く)F=1,900,000円
減価償却費G=100,000円
税前利益ZM
税率t=20%
税金ZK

借入金の元本返済額K=200,000円とすると、黒字ライン患者数nは

n=F(1-t)-Gt+K/p(1-v-t+vt)
=1,900,000(1-0.2)-100,000×20%+200,000/4,000×(1-0.15-0.2+0.15×0.2)
=625人/月(1ヵ月の黒字ライン患者数)

上記の数値はすべて1ヶ月の数値ですから、1ヶ月当たり625人の患者さんを診療したら黒字になる計算です。

1ヵ月の診療日数を20日とすると

黒字ラインの1日当たり患者数の目安=625人÷20人=31.25人

つまり、1日32人程度で黒字ラインに到達する計算です。

黒字ラインの患者数の算定方法(詳細版)は(簡易版)では考慮しなかった変動経費、減価償却費、税金等を考慮して算出しています。黒字ラインの患者数を精緻に把握できるようにしておくとクリニック経営の舵取りが正確になってきます。

この計算は、慣れない方にとっては難しいと思われたと思います。当事務所にて経営コンサルティングや開業コンサルティングのご支援をさせていただいている先生には、図解で詳しくご説明していますので、ご安心ください。

患者数が不足していても黒字化できるクリニックの特徴
(経営改善の重要ポイント)

黒字ラインはあくまで目安であり、院長の経営戦略やオペレーション改善により、少人数でも黒字化しているクリニックは存在します。その特徴は次の通りです。

  • 他の診療科目の導入
    ⇒ アレルギー科の導入など
  • 適正な人員配置
    ⇒ 開業初期はスタッフ数を最小限に抑え、患者数に応じて段階的に増員
  • 自費診療メニューの導入
    ⇒ 美容皮膚科、ワクチン、健診、点滴療法など
  • 効率的な予約システム
    ⇒ 予約管理を徹底し、空き時間を最小化
  • 検査の内製化や機器投資で単価UP
    ⇒ 診療単価向上と回転率維持の両立
  • デジタル活用による業務効率化
    ⇒ 電子カルテ、Web問診、オンライン診療

特に最近は、Web問診と予約管理の導入により、受付業務や待合時間を効率化し、少人数体制でも高い診療密度を実現するケースが増えています。「患者数=人数」ではなく、「単価×効率×満足度」の総合力が求められる時代です。

数字を理解し、戦略的な経営を

クリニック経営は、「忙しい=儲かっている」とは限りません。逆に、適正な患者数で高品質な診療と安定した利益を実現することこそ、院長先生が長期的に健全な医療提供を継続する理想の姿ではないでしょうか。

当事務所では、クリニック特化型の収益シミュレーションや経営アドバイスを行っています。経営アドバイスは、オンライン相談やウェビナーにて全国のクリニックに対応しています。数字や経営のことでお悩みがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

※ このコラムでは読んでいただく方にとって、なるべくわかりやすいものとなるように、会計・税務上の正確な定義とは異なる表現になっているものもございます。ご容赦ください。

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