皮膚科開業医が年収3,000万円を実現する保険と自費の黄金比
- 2026.09.18|クリニック経営 成功への道
皮膚科開業医で年収3,000万円になるためには自由診療を取り入れること
皮膚科クリニックの外来単価
皮膚科クリニックの外来単価は、診療科の中でももっとも低い水準にあります。九州厚生局が公表している「九州厚生局管内の診療科別平均点数一覧表」でも、皮ふ科は診療科別の平均点数がもっとも低い部類に入ります。
九州厚生局「保険医療機関・保険薬局の方へ」(診療科別平均点数一覧表)
ただし、この一覧表の平均点数は「レセプト(診療報酬明細書)1件あたりの平均点数」(1ヶ月分の請求点数の平均)であり、1回の受診あたりの単価とは異なります。
1点=10円で換算されますが、1回あたりの実質的な単価は、月間の合計を受診回数で割った金額であるため、これよりもさらに低く3,500円~4,000円程度が実情です。
また、こうした統計上の「皮膚科」区分には形成外科の数値も合算されている場合があります。
形成外科は手術を伴うために単価が高くなる傾向があり、平均値を押し上げていると考えられ、皮膚科単体の実態としては、さらに低い単価水準と捉えておくべきでしょう。
当事務所が過去のコラムで示した診療科別シミュレーションでは、「皮膚科で年収3,000万円を達成するには1日88~90人程度の患者が必要」という試算になりました。(「開業医で年収3000万円を目指すときの1日平均患者数は?」を参照)
この場合の皮膚科クリニックの売上高は8,000万円ほどです。年商8,000万円ほどで、経費が約5,000万円です。その残りが先生の年収ですから、年収3,000万円となります。
保険診療と自由診療(自費診療)を組み合わせた経営
しかし、実際に皮膚科クリニックの経営相談を受けていると、「保険診療だけで毎日90人近くを診るのは体力的に限界がある」というお悩みを抱える先生が少なくありません。
そこで重要になるのが、保険診療と自由診療(自費診療)を組み合わせた経営です。
自由診療は保険点数の縛りがなく、価格設定も自由で単価を高めやすいため、患者数を大幅に増やさなくても利益率を引き上げられる可能性があります。
しかし、この組み合わせには、保険診療のみのクリニックでは意識する必要のない、消費税・事業税・機械や材料の消費税区分・機器投資の減価償却といった独自の税務・会計論点が数多く存在します。
本コラムでは、当事務所が皮膚科・美容皮膚科の顧問先12院で培った知見をもとに、皮膚科クリニックが年収3,000万円、そしてその先を実現するための経営戦略と、そこに潜む税務上の落とし穴を解説します。
1.皮膚科クリニックの経営数字:保険と自費、それぞれの実力
保険診療中心と自由診療中心の場合の人件費率の違い
保険診療をメインとする皮膚科クリニックの場合、人件費率(院長報酬を除く)の目安は25~30%です。
人件費率とは、「売上(医業収益)のうち、どれだけを労働の対価として支払ったか」の割合で、経営指標の一つです。
患部が全身にわたり、衣類の着脱介助や軟膏処置の補助にスタッフの手数がかかるためで、耳鼻科(15~20%)よりもやや高めに出る傾向があります。
一方、自由診療中心の美容皮膚科では、施術単価を高く設定できるため人件費率は15~20%まで下がる傾向があります。しかし、接遇基準の高さゆえの採用コスト増や、成果に応じたインセンティブ制度によって、近年はむしろ上昇傾向にある点にも注意が必要です。
保険診療と自由診療の繁忙期の違い
繁忙期にも、保険診療と自由診療とで特徴があります。
保険診療は、夏の汗疹(あせも)・虫刺され、冬の乾燥性皮膚炎、さらに3月前後の花粉皮膚炎と、年に複数回のピークが訪れます。一方、自由診療(美容医療)は紫外線の強い夏を避け、秋から春にかけて集中しやすい傾向があります。
保険診療と自由診療の両者を組み合わせることで、年間を通じた収益の波を平準化できるというメリットもあります。
2.保険患者を自費診療へつなぐ「動線設計」
自費メニューのご案内
自由診療の売上を伸ばすためには、広告に頼るだけでなく、来院された保険診療の患者様に自然な形で自費メニューをご案内する院内の動線設計が重要です。
例えば、ニキビ治療で通院している患者様に、保険診療の範囲では対応しきれない「ニキビ跡」への自費治療をご案内する、乾燥肌治療で通院している患者様に保湿系のドクターズコスメをご紹介する、といった形です。
ただし、保険診療の診察の場で自費メニューを強引に勧めると、患者様の信頼を損ないかねません。院内掲示やパンフレット、待合室でのご案内など、押し付けにならない形での情報提供の仕組みづくりが、長期的な自費売上の底上げにつながります。
「いつもの薬だけ欲しい」という患者様への対応
また、皮膚科は「いつもの薬だけ欲しい」という慢性疾患の患者様も多く来院されます。
医師法上、医師が診察をせずに処方箋を交付することは認められていないため、こうした患者様についても必ず医師の診察を経る必要がありますが、症状が安定しており診察内容がシンプルなケースが多いのも事実です。
そこで、初診や症状の変化がある再診とは別に、短時間の診察で済む患者様向けの診察枠や受付導線を設けることで、待ち時間の負担を軽減する工夫をしている当事務所の顧問先もあります。
こうした運用の工夫も、皮膚科クリニックの患者満足度と回転率の両立に役立ちます。
3.保険診療と自由診療、消費税の扱いがまったく違う
保険診療と自由診療をする皮膚科経営で、押さえておくべきなのが、消費税の課税区分です。
国税庁のタックスアンサーNo.6201「非課税となる取引」に定められているとおり、健康保険法等に基づく保険診療は消費税が非課税とされます。一方、美容目的の自由診療(しみ取り、脱毛、ケミカルピーリングなど)による収入は、原則として消費税の課税対象です。
国税庁 タックスアンサーNo.6201「非課税となる取引」
開業当初は基準期間(原則として開業から2期前)の課税売上高がゼロのため、多くのクリニックは消費税の免税事業者としてスタートします。
しかし、自由診療の売上比率が高い皮膚科クリニックでは、開業2~3年目に自由診療の課税売上高が1,000万円を超え、突如として消費税の納税義務が発生するケースが珍しくありません。
「保険診療がメインだから消費税は関係ない」と考えていると、ある年の申告で数百万円規模の納税が発生し、資金繰りに慌てる先生を、当事務所ではこれまで何人も見てきました。
自由診療を取り入れる場合は、消費税の課税があることを資金繰り計画に盛り込んでおくことが大切です。
消費税区分については、後でも解説いたします。
4.消費税還付の「3年縛り」は自費割合が高いほど危険
開業時に、レーザー脱毛機やIPL(光治療)機器といった高額な医療機器を導入する場合、あえて課税事業者を選択して消費税の還付を受けるという手法があります。
しかし、この制度は諸刃の剣です。
還付を受けてから3年間は課税事業者であることが強制されるため、その後の自由診療売上にかかる消費税をすべて納税する義務を負うことになります。
特に自費割合の高い美容皮膚科では、還付された金額よりも、その後3年間の納税総額のほうが大きくなり、結果的に損をするケースが多く見られます。
この判定には、開業後数年間の自由診療売上の予測が不可欠であり、機器導入前の緻密なシミュレーションが欠かせません。
5.美容機器投資の減価償却と資金調達の考え方
美容機器の投資と減価償却
皮膚科クリニックの設備投資では、レーザー脱毛機やダーマペン、医療用IPLなど、1台数百万円~2,000万円規模の美容機器の導入判断が経営を左右します。
保険診療用の医療機器と異なり、美容機器は流行り廃りのサイクルが早く、数年で型落ちとなるものも珍しくありません。
そのため、耐用年数どおりの定額法で悠長に償却するより、初年度に多く経費化できる定率法を選択し、早期に投資回収を図る判断が向いているケースが多くあります。
また、美容機器はリースを活用することで、初期の借入負担を抑えつつ、患者様の需要動向を見ながら機器を入れ替えやすくするという柔軟な経営判断も可能です。
美容機器投資のシミュレーションの必要性
どの機器を自己所有し、どの機器をリースにするかの判断は、資金繰りへの影響を含めて慎重にシミュレーションする必要があります。
自由診療は、脱毛・シミ取り・たるみ治療・医療ダイエットなど、メニューを増やすほど収益機会が広がるように見えます。しかし、メニューを増やすということは、その分だけ専用の医療機器を揃える必要があるということでもあります。
機械の種類が増えれば、その分だけ保守・メンテナンス費用もかさみ、稼働率の低い機械がかえって「コスト倒れ」を招いているクリニックを、当事務所では実際に目にしています。
利益を増やすための逆説的な戦略
当事務所の顧問先には、あえてメニューと導入する機械のラインナップを絞り込み、限られた強みに特化することでコストを抑え、成功している皮膚科クリニックがあります。
また、機械に頼らず、ボトックス注射のように院長の技術力そのものが強みとなる自由診療メニューに軸足を置き、大きな設備投資をせずに利益率を高めているクリニックもあります。
美容医療は価格競争が激しい分野でもあるため、機械を増やすことがそのまま収益増につながるとは限らない、という視点を持っておくことが重要です。
6.事業税も「按分計算」が必要になる
医療法人の場合、社会保険診療報酬にかかる所得は事業税が非課税というのが原則です(福岡県「法人の事業税」参照)。
福岡県ホームページ「法人の事業税」
しかし皮膚科クリニックのように保険診療と自由診療の両方を行う場合、事業税を正しく計算するには、利益を保険診療によるものと自由診療によるものに按分する必要があります。
この按分計算を怠ると、本来非課税であるはずの保険診療分の所得にまで事業税がかかってしまったり、逆に自由診療分の所得への課税が漏れて税務調査で指摘を受けたりするリスクがあります。
7.機械・材料の消費税区分(個別対応方式)に要注意
皮膚科クリニックのように保険診療(非課税売上)と自由診療(課税売上)の両方を行う場合、機械や診療材料を購入した際の消費税の扱いにも独自の注意点があります。消費税の仕入税額控除には「個別対応方式」という計算方法があり、購入した資産・費用を
- ① 自由診療(課税売上)にのみ使うもの
- ② 保険診療(非課税売上)にのみ使うもの
- ③ 保険診療と自由診療の両方に共通して使うもの
これらの3つに区分して計算します。
①の「自由診療専用」に区分できる機械や材料は、仕入れにかかった消費税を全額控除できます。一方、③の「共通対応」に区分されると、課税売上割合に応じた金額しか控除できません。
ここで問題になるのが、対応する会計事務所の知識の差です。
本来「自由診療専用」として全額控除できる機械であっても、区分の確認を怠って一律に「共通対応」として処理してしまうと、本来控除できたはずの消費税の一部を控除し損ねます。すると、結果的にクリニックが損をすることになり、先生の年収を下げてしまうことにつながります。
皮膚科クリニックで高額な美容機器を導入する際は、その機械が「自由診療専用」なのか「保険・自由診療共通」なのかを、購入のたびに正確に区分・確認できる会計事務所であるかどうかが、消費税の負担額に直結し、先生の年収を増やすための重要なポイントです。
8.スタッフへの自費施術割引、給与課税に要注意
美容皮膚科を併設する場合、スタッフに自院の自費施術を割引価格で提供することがあります。
この際、原価または販売価格の70%のいずれか大きい金額以上で提供しないと、その差額はスタッフへの「給与」とみなされ、源泉徴収や社会保険料の対象になります。
福利厚生のつもりで用意した割引制度が、思わぬ追徴課税につながらないよう、金額設定のルール化が必要です。
当事務所が経験した消費税納税が発生した実例
保険診療中心で開業されたC先生は、開業3年目に自由診療(脱毛・ピーリング)の売上比率を高めたところ、4年目に突然、消費税の課税事業者となる通知を受けました。
事前に自由診療売上の推移をシミュレーションしていなかったため、当該年度の納税資金を急遽確保する必要が生じましたが、当事務所で資金繰り計画を前倒しで組み直し、無事に乗り切ることができました。
この経験から、当事務所では皮膚科クリニックの顧問先には、自由診療比率が一定水準を超えた段階で、必ず消費税シミュレーションを実施するようにしています。
9.福岡の激戦区で差別化するには
福岡県は皮膚科クリニックも激戦区です。同じ商圏に保険診療のみのクリニックが複数存在する中で、自由診療メニューの充実は大きな差別化要因になります。
特に、天神・博多といった中心部では美容意識の高い患者様が多く、自由診療との相性がよい立地といえます。
一方、郊外エリアでは家族連れの保険診療のニーズが中心となるため、自由診療の比重を上げすぎない設計が安定経営につながるケースもあります。
開業前の立地選定の段階から、競合となる皮膚科クリニックを分析しつつ、保険と自費のバランスをどう取るかを事業計画に織り込んでおくことが重要です。
皮膚科クリニックのよくあるご質問Q&A
- 自由診療の割合は何%くらいを目指すべきですか?
-
一律の正解はありませんが、考え方の軸は「どれくらいの規模を目指すか」です。保険診療は単価が低いため、院長先生の売上や給与を大きく伸ばすには、相応の患者数をこなす必要があります。
一方で、保険診療メインであれば高額な機械を揃える必要が少なく、設備投資やメンテナンス費用といった経費も抑えられるため、経営リスクは小さくなります。大きな拡大を望まず、リスクを抑えた堅実な経営をしたい先生には、保険診療をメインとする選択も十分に合理的です。
反対に、事業として大きく拡張していきたいのであれば、自由診療の比率を高めていくことになります。
当事務所の顧問先には、自費と保険の比率を50:50にされているクリニックもあります。その先生は「自費診療は水商売のようなもので、いつブームが過ぎ去るかわからない。だからこそ保険診療もしっかりやる」という考え方を持っており、両輪でバランスを取る経営をされています。
まとめ:皮膚科経営は「保険と自費の設計」が年収を決める
皮膚科は保険診療単価が低く、自由診療との組み合わせが年収3,000万円達成の鍵となります。保険診療は消費税非課税、自由診療は課税対象という区分を正しく理解し、消費税還付の「3年縛り」は自費割合が高いほど慎重に判断する必要があります。
また、美容機器投資は減価償却方法とリース活用の判断が資金繰りを左右し、事業税も保険診療分と自由診療分の按分計算が必要です。機械・材料の消費税区分(個別対応方式)や、スタッフへの施術割引にも独自の税務論点があります。
これらを正しく設計できれば、皮膚科クリニックでも十分に年収3,000万円、そしてその先を目指すことができます。

【皮膚科クリニックの経営でお悩みの先生へ:無料相談のご案内】
「保険診療と自由診療の比率をどう考えたらいいかわからない」「そろそろ美容メニューを増やしたいが、税務面が不安」「高額な美容機器を導入したいが、財務的に問題ないか」――そのようなお悩みをお持ちの先生は、ぜひ医療専門の平井公認会計士事務所にご相談ください。
平井公認会計士事務所は、皮膚科クリニックの顧問実績12院を含む、医科クリニックに専門特化した公認会計士・税理士事務所です。
保険診療と自由診療を組み合わせた経営の税務・会計設計から、消費税シミュレーション、開業後の経営改善まで一貫してサポートいたします。オンラインでの無料相談も承っております。
(※当事務所は医科専門のため、歯科の先生は原則対応しておりませんのでご了承ください)
(受付時間:9:00~17:30 土・日・祝を除く)
こちらのコラムもご参照ください
開業医で年収3000万円を目指すときの1日平均患者数は?
開業医を目指される先生は、1日にどれくらいの患者さんを診療しないといけないのか、把握しておくことは大切です。クリニック経営・税務専門の平井公認会計士事務所が、「年収3,000万円を実現するために必要な1日あたりの平均患者数」を、診療科別でシ…
福岡で開業医になり年収5,000万円(手取り3,000万円)を実現する方法とは?
勤務医から開業医への転身を考えるとき、年収5,000万円(手取り3,000万円)は一つの現実的な目標です。実現のカギは医師優遇税制の活用、診療科ごとの事業計画、医療法人化の適切なタイミングの3つです。医科専門の平井公認会計士事務所が、診療科…


