クリニックの開業支援で成果が出やすい先生に共通する3つのパターン
- 2026.09.15|クリニック経営 成功への道
はじめに:同じように開業支援を受けても、明暗が分かれる理由
「同じ開業コンサルタントから、同じように開業支援を受けたはずなのに、なぜあのクリニックは軌道に乗り、うちは苦戦しているのだろうか?」
開業後の経営状態には大きな差
このような疑問を抱く先生は少なくありません。開業コンサルタント、金融機関、会計士・税理士など、開業支援に関わる専門家の顔ぶれは似ていても、開業後の経営状態には大きな差が生まれます。
当事務所でも、入念に計画をして開業支援したとしても、明暗が分かれる場合もあります。
厚生労働省の医療施設動態調査によれば、令和6年の一般診療所数は10万5,207施設で、前年から313施設増加しました(出典:厚生労働省「医療施設(動態)調査・病院報告(令和6年)」)。
開業件数そのものは全国的に増加傾向にありますが、その裏側では「開業したものの、想定していたほど経営が安定しない」というご相談も後を絶ちません。
支援の受け方・関わり方の差が、開業後の成果を大きく左右する!?
平井公認会計士事務所では、これまで約100件(令和8年7月時点、内科20、耳鼻科12、皮膚科12、整形外科7など多岐にわたる診療科)の顧問・支援実績があり、開業支援から開業後の経営まで一貫して伴走してきました。
その中で見えてきたのは、「支援内容の差」以上に、「支援の受け方・関わり方の差」が、開業後の成果を大きく左右しているという事実です。
開業を成功させるための知識やノウハウ自体は、書籍やインターネットでもある程度得ることができます。最近ではAIで調べることもできます。しかし、そのノウハウを「いつ」「どのように」実践に落とし込むかという運用の巧拙こそが、開業後数年経ってからの経営状態を大きく分けています。
同じ税理士事務所に依頼していても、相談を始めるタイミングや、開業後の情報共有の頻度によって、結果は大きく変わります。
本コラムでは、当事務所が現場で見てきた実例をもとに、開業支援で成果が出やすい先生に共通する3つのパターンと、逆に苦戦しやすいパターンを具体的に解説します。
これから開業を目指す先生は、ぜひご自身の準備状況と照らし合わせながらお読みください。
最初に:本コラムで述べる「成果」とは?
本コラムでは、「成果」という言葉がたくさん出てきます。この「成果」とは、単に開業できたかどうかではなく、開業後も安定的に黒字を確保し、先生ご自身とご家族の生活基盤が守られている状態を指します。
個人クリニックであれば利益率25%以上(できれば30%以上)、医療法人であれば院長報酬と法人利益の合計が年間売上の25%以上(目標は30%)を、当事務所では経営健全度の一つの目安としています。
ただし、設備投資額が大きくなるほど、経費に占める減価償却費の割合も大きくなるため、この目標利益率30%を下回ること自体は珍しくありません。
減価償却費とは?
なお、「減価償却費」とは、高額な医療機器などの固定資産を購入した費用を、購入した年に一括で経費にするのではなく、国税庁が定めた耐用年数に応じて分割し、毎年少しずつ経費計上する会計上の仕組みです。
実際にお金が出ていくのは購入時ですが、経費として認識されるのはその後数年間にわたって少しずつです。そのため、高額な設備投資をした年ほど、この減価償却費が利益を押し下げる要因になります。
その対策として、当事務所では、単に目標数値との比較だけでなく、同じ診療科の他院と比較して減価償却費率が高いか低いかを個別にお伝えするようにしています。
減価償却について詳しく知りたい先生は、「クリニックの経営管理でおさえるべき数字とは?」をご参照ください。
1.成果が出やすいクリニックに共通する3つのパターン
開業支援を受けた先生の中には、開業後にすぐに黒字化し、安定した経営を続けている方がいる一方で、資金繰りに苦しみ続ける方もいます。
両者の違いは、医師としての実力や診療科の選択だけではありません。当事務所が支援してきた事例を分析すると、成果が出やすい先生には共通する「行動パターン」があることが分かります。
パターン①
事業計画作成の早い段階から会計士・税理士が関与している
成果が出やすい先生の多くは、物件が確定する前、あるいは開業の意思が固まった段階で、既に会計士・税理士に相談を始めています。
一般的に、開業支援は「物件が決まってから」「融資の申し込み直前になってから」税理士に声がかかるケースが多く見られます。しかし、その段階では既に診療圏分析や資金計画の大枠が固まってしまっており、修正できる余地が限られています。
早い段階から開業支援できると?
早い段階から開業支援に関与できると、次のような調整が可能になります。
- 診療科ごとの実データに基づいた、現実的な診療単価・患者数の設定
- 自己資金の準備計画(開業の1~2年前から計画的に自己資金を積み立てる)
- 物件選定段階での賃料・立地条件の妥当性チェック
- 医療機器の投資額を、後から減らせるように少し多めに見積もった融資枠の確保
- その上で、実際には必要最小限の医療機器でスタートし、経営が軌道に乗った後に追加購入するという選択肢のご提案
現実的な診療単価設定ができるかが、開業後の明暗を分ける
特に「診療科ごとの実データに基づいた、現実的な診療単価の設定」については、勤務医時代のうちに準備できることがあります。ご自身が担当している外来の診療単価を、病院の事務部門に依頼して出してもらっておくと、開業後の診療単価の精度が格段に上がります。
例えば、バイオ(生物学的製剤)による治療を受けている患者様を何人担当していて、何日おきに外来に来ていただいていて、1回あたりの単価がどれくらいかは、一般内科の単価とはまったく異なります。バイオは薬剤原価も高いため、開業後の利益率に大きく影響します。こうした情報も、勤務医時代のうちに確認しておくことをお勧めしています。
開業予定の1年以上前にご相談を
当事務所の顧問先でも、開業の1年以上前、まだ物件も決まっていない段階でご相談にいらした内科の先生がいます。
この段階から診療圏分析や自己資金の積み立て計画を一緒に組み立てたことで、いざ物件が決まった際には、迷いなく現実的な事業計画をすぐに作成でき、金融機関からもスムーズに評価を得ることができました。
早期関与によって、事業計画の「土台」そのものの精度が上がるため、その後の資金調達や開業後の経営にも好影響が及びます。
なお、当事務所では、税務顧問契約とその費用の発生は開業後からとしており、事業計画作成の報酬は別途発生しますが、相談を始める時期が早いからといって、その分の期間が長くなり報酬が高くなるということはありません。早い段階からご相談いただくこと自体に、追加の費用負担が生じる心配はありません。
パターン②
開業後の実データを早期・継続的に共有し、計画と実績のズレを早期に修正している
事業計画と実際のズレがあれば早めに調整を
開業前にどれほど精緻な事業計画を立てても、実際の患者数や診療単価は開業してみなければ分かりません。
成果が出やすい先生は、開業後の試算表や日々の診療実績を早期かつ継続的に会計事務所と共有し、計画と実績のズレを早い段階で把握しています。
試算表とは、計画と実際の業績を比較した経営指標のことです。
例えば、開業後3ヶ月の実績が計画を下回っていた場合、成果が出やすい先生は「なぜズレが生じているのか」(患者数か、単価か、季節要因か)を早期に分析し、広告や診療体制の見直しなど、必要な対策を早い段階で講じます。
領収書の共有はお早目に
試算表の作成は税理士が行いますが、先生から領収書や請求書などを、当事務所へ共有していただく必要があります。
しかし、開業したての先生は、業務に慣れていないこともあり、日々の診療に追われ、領収証や請求書などを当事務所へ共有していただく時間がなかなか取れません。それらの提出を待ってから試算表を作成していては、状況の把握が遅れてしまいます。
そこで当事務所では、開業直後の数ヶ月は特に、試算表の完成を待つのではなく、まず通帳残高が不足していないか(1,000万円を下回っていないか)、先月末と今月末の通帳残高がいくらかを、頻繁に共有していただくようにしています。
資金が足りているかどうかをまず確認することが、試算表による詳細な分析よりも優先度の高い、初動の安全確認になります。
試算表での判断が遅れると?
一方、実績の共有が遅れる、あるいは試算表を「見るだけ」で終わってしまう先生は、計画と実績のズレに気づいたときには、資金繰りが既に悪化していることが少なくありません。半年、1年と経ってから「実は開業当初から患者数が計画を下回っていた」と分かるケースでは、打てる対策の選択肢が大きく狭まってしまいます。
開業後の実データを早期・継続的に共有し、打てる手が狭まる前に計画と実績のズレを早期に修正することで、成果が出やすくなります。
パターン③
運転資金に余裕を持たせ、設備投資の意思決定を数字で判断している
赤字機関を乗り超えるために、十分な運転資金の確保を
開業直後は、患者数が計画通りに増えず、赤字が続く期間が生じるのが一般的です。成果が出やすい先生は、この赤字期間を乗り越えるための運転資金を十分に確保した上で開業しています。
当事務所が推奨する運転資金の目安は、診療科にもよりますが、最低でも1,500万円~2,000万円程度です。1,000万円程度では、想定外の赤字期間が続いた場合にやや心もとない水準といえます。
実際に、開業直後の1日の外来患者数が10人未満、日によっては「1日2人」という状況が1~2ヶ月続いた内科クリニックの事例もありますが、運転資金に余裕を持たせていたことで、資金ショートを回避できました。
当事務所に開業支援をご依頼いただいた場合は、運転資金が足りなくなるような支援は致しませんので、お任せください。
数字に弱い開業コンサルタントに依頼してしまったら?
開業コンサルタントと言っても、それぞれの専門分野があり、中には数字に弱い開業コンサルタントもいます。そのような開業コンサルタントに支援を依頼した場合に、「運転資金が足りなくなった」ということがよくあります。
数字に弱い開業コンサルタントの言いなりのままに事業計画を立ててもらった場合は、注意が必要です。運転資金が潤沢かどうかの判断は、先生もできるようになっておいてください。
医療機器の追加投資にも要注意
また、開業後の医療機器の追加投資についても、注意が必要です。税理士によっては、「利益が出ているから医療機器を購入すべきだ」と安易に提案してくる場合もあります。安易に購入してしまうと、無駄な投資となり、資金繰りを悪化してしまう要因にもなりかねません。
当事務所では、「預金残高があるから買う」ではなく、「その機器がどの程度の期間・単価で稼働すれば、何年で投資額を回収できるか」という数字に基づいて判断しています。
この積み重ねが、開業後数年経っても資金繰りが安定しているクリニックと、そうでないクリニックの分かれ目になっています。
2.逆に、成果が出にくいクリニックに共通するパターン
一方で、開業後に苦戦しやすい先生にも、共通するパターンがあります。上記の3つのパターンの「裏返し」でもありますが、具体的にどのようなケースがあるのか見ていきましょう。
開業直前・融資決定後に相談が来るケース
融資が既に決まった段階、あるいは開業まで数ヶ月というタイミングで、当事務所へ相談にいらっしゃる先生も少なくありません。この段階では、既に事業計画・融資額・物件契約が確定しており、修正できる範囲が非常に限られています。
以前、開業直前に顧問契約の打診を受けた際、提示された事業計画があまりにも現実を無視した内容だった事例もありました。当事務所としては、先生の将来を責任もって守り抜くことができないと判断し、税務顧問の受託を見送らせていただきました。
その事業計画は、融資総額が身の丈を大きく超えており、その時点から軌道修正するには、開業そのものを延期するくらいの大きな決断が必要な状態だったのです。事業計画に無理がある場合、後から気づいても手の打ちようがないことが多いです。
当事務所の顧問契約は、できれば開業を考えた時点で、遅くともテナント契約をする前にお願いします。
開業後に支援が途切れるケース
開業させることをゴールとする開業コンサルタントに依頼した場合、開業後にフォローが途切れてしまうことがあります。この場合、開業時に立てた事業計画が、その後の実態とどれだけ乖離しているかを検証する主体がいなくなってしまいます。
先生ご自身で試算表を確認していても、「何が正常で、何が異常な数字なのか」の判断基準がなければ、問題の発見が遅れがちです。
これは、医療に詳しくない方が血液検査の結果表を見せられても、数値だけではどの項目がどれくらい悪いのか判断できないのと同じです。数字を読み解く専門知識があって初めて、その数字が持つ意味が分かります。
特に、開業支援と開業後の税務顧問を、別のコンサルタントや事務所に依頼している場合、開業時の事業計画の前提が正確に引き継がれず、開業後のアドバイスが的外れになってしまうこともあります。
開業支援を行う担当者と、開業後の記帳・税務を担当するスタッフが事務所内で異なることは珍しくありませんが、その場合でも、開業段階の情報が社内できちんと引き継がれているかどうかが重要です。開業後も継続的に伴走する専門家がいるかどうかが、経営の安定度に直結します。
社会保険労務士との契約もお早目に
なお、成果が出やすいという意味では、税理士・会計士だけでなく、社会保険労務士とも早い段階から契約しておくことをお勧めします。
スタッフの採用・労務管理・社会保険手続きは開業と同時に発生するため、開業後に慌てて探すのではなく、開業前から相談できる体制を整えておくと、労務トラブルの予防にもつながります。
特に注意が必要なのが、勤務医時代の病院のスタッフに声をかけて、自院に一緒に来てもらうケースです。
以前から気心の知れた相手だからこそ、給与水準や休日、勤務時間といった労働条件を「このくらいで」といった曖昧な口頭のやり取りで済ませてしまう先生が少なくありません。
しかし、実際に開業して働き始めてから、先生とスタッフの間で認識の違いが発覚し、大きなトラブルに発展するケースが多く見られます。
開業前の段階で、社会保険労務士を交えて労働条件をきちんと書面で取り決めておくことが、こうしたトラブルを防ぐ重要なポイントです。
3.平井公認会計士事務所が実践する「成果が出るパターン」の作り方
当事務所では、これまでの支援実績から見えてきた「成果が出るパターン」を、すべての先生に再現していただけるよう、次のような体制で開業支援を行っています。
- 開業の意思が固まった段階からのご相談を推奨し、物件確定前からの事業計画づくりに対応
- 事業計画では開業資金を潤沢に準備。銀行との交渉にも対応
- 開業後は試算表を毎月お渡しするだけでなく、診療科ごとの実データと比較しながら、計画とのズレを早期にご報告
- 医療機器や増員などの投資判断は、回収期間のシミュレーションを添えて数字でご説明
- 開業後も継続して顧問契約を結んでいただく先生が大半で、開業をゴールにせず、その後の経営まで一貫して伴走
- 約100件(内科・耳鼻科・皮膚科・整形外科など)の実データを保有しているため、診療科ごとの季節変動や妥当な人件費率(院長報酬を除き20~25%、整形外科は30%が目安)なども踏まえたアドバイスが可能
当事務所では、「開業支援」と「経営支援」を切り離さず、一つの連続したプロセスとして捉えることが、成果が出やすいパターンを再現する鍵だと考えています。
また、当事務所は建設業や飲食業など一般企業の顧問を持たず、医療機関の税務・会計・経営指導にのみ特化しています。MS法人4件、調剤薬局4件(27店舗)、総合病院1件(240床)の支援実績もあり、クリニック単体にとどまらず、法人全体を俯瞰した視点でのアドバイスが可能です。
開業段階から将来の分院展開や医療法人化まで見据えた相談ができる点も、成果が出やすいパターンを支える土台の一つになっています。
まとめ
クリニックの開業支援は、「誰に依頼したか」だけでなく、「どのタイミングで、どのように関わってもらったか」によって、開業後の成果が大きく左右されます。
- 事業計画作成の早い段階からの関与
- 開業後の実データに基づく早期の軌道修正
- 潤沢な運転資金の準備
これら3つのパターンを意識するだけで、開業後の経営の安定度は大きく変わってきます。逆に、開業直前の相談や、開業後の支援の途切れは、経営リスクを高める要因になり得ます。
これから開業を目指す先生、あるいは既に開業準備を進めている先生は、ぜひ一度、事業計画の内容や、開業後の支援体制について、医療専門の会計士・税理士に相談することをお勧めします。
平井公認会計士事務所では、これまで約100件の支援実績を基に、開業前の事業計画づくりから、開業後の経営支援まで一貫してサポートしております。開業準備中の先生も、既に開業されている先生も、まずはお気軽にご相談ください。

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