福岡県の医療法人の事業税はいくら?事業税の計算方法と支払方法
- 2026.03.5|クリニック経営 成功への道

事業税とは?:医療法人だけに許された「非課税の聖域」とその実態
医療法人の理事長先生が、決算後に「なぜ法人税の額に比べて事業税が少ないのか?」、あるいは逆に「なぜこれほど事業税がかかるのか?」と疑問に思うことがあります。
事業税とは、事業所得(クリニック事業の利益)に対して課される「都道府県税」です。福岡県ホームページ「法人の事業税」によると、事業税を納める対象者は「事業を行っている法人で、県内に事務所または事業所のあるもの」とありますが、医療法人の場合は、地方税法により「社会保険診療報酬にかかる所得は非課税」と定められています。
これは、公的な医療サービスを提供することへの政策的な配慮であり、一般の株式会社には存在しない、医療法人だけに許された極めて大きな優遇措置です。
しかし、医療法人・個人事業主のどちらでも、社会保険を利用しない診療報酬には事業税がかかります。この税制優遇を正しく受けるためには、得られた利益を保険診療によるものと、保険外診療や物販などによるものをきっちり分ける必要があります。そのため、一般法人とは全く異なる「所得の按分計算(あんぶんけいさん:一定の比率で割り振ること)」という非常に煩雑な手続きが必要となります。
損益計算書(P/L)と法人税申告書での立ち位置
まず、経営分析をする上での基本となる損益計算書(P/L)での表示を確認しましょう。損益計算書とは、決算書の中の一つで、クリニックの一定期間の利益を計算した書類です。利益は、収益から費用を引いたもので、一定期間の経営成績を示します。
クリニックを経営されている先生であれば、通常は1年に1回、税理士さんから届く書類です。
事業税は、一般的には税引前当期純利益の下に「法人税、住民税及び事業税」として、他の税金と合わせて一括表示されます。これは、利益に対して課される「利益配分」の性格が強いためです。
医療法人における事業税の税率
事業税の税率は、全国一律ではありません。地方税法では、自治体が課税する際の目安となる「標準税率」が定められていますが、自治体の判断でそれを上回る「超過税率」を適用することが認められています。
- 標準税率:多くの自治体が採用。
- 超過税率:東京都、大阪府、愛知県、福岡県などの都市部や、財政状況が厳しい自治体で適用されることが多いです。
税率はおおよそ
- 400万円以下:3.5%
- 800万円以下:5.3%
- 800万円を超える:7.0%
このように、800万円を超えた所得に対しては税率が高くなります。一般的な企業であれば事業税の計算は簡単にできますが、医療法人の場合は非課税の利益と課税対象の利益があるので、計算が複雑になります。
専門的ですが、とても大切な「節税の連動性」の話
ここからは少し専門的なお話になりますが、キャッシュフロー(現金の流れ)を守るために非常に重要ですので、優しく解説します。クリニックを安定経営をするためには、キャッシュフローが非常に重要となります。
注目すべきは、「事業税は、支払ったときの経費(損金)になる」という点です。法人税などは支払っても経費になりませんが、事業税だけは別格です。
具体的には、法人税の申告書である「別表4(べっぴょうよん:会計上の利益から税務上の所得を計算する明細書)」において、実際に事業税を納付したタイミングで所得を減算(マイナス)する処理を行います。来期はすでに事業税は支払った後ですから、所得が減産されると、それだけ法人税などの税金が少なくなります。
つまり、今期に事業税を一生懸命払うことは、来期の税金計算において所得を下げる「節税効果」を生んでいるのです。
この「今払った税金が、来年の経費になる」という連動性を理解することが、中長期的な資金繰りを予測する上で極めて重要です。
医療法人特有の「所得按分」:恣意性を許さない計算のルール
一般の株式会社であれば、税金の計算は、法人の総所得(残った利益)にそのまま税率を乗じて計算が完了します。しかし、医療法人は「非課税となる保険診療所得」と「課税される自費診療等の所得」を、外科手術のように切り分けなければなりません。
① 「収入比率」による合理的区分
医療法人の経費(スタッフの給与や材料費など)を、「これは保険診療分、これは自由診療分」と明確に区分することは、実務上不可能です。同じ看護師が保険診療も自費の点滴も行うからです。そのため、実務では収入比率に基づいた按分計算を行います。
課税対象所得 = 法人の総所得 ×(その他の収入 / 法人の総収入)
この計算において「その他の収入(課税対象)」に何を算入するかで、最終的な事業税額が決まります。
ここに恣意性(しいせい:自分勝手な考え)が入る余地はほとんどありませんが、計算の基礎となる「数字の仕分け」には、医療特有の極めて細かいルールが存在します。
② 雑収入の仕分け:実務で差がつく判定のポイント
実務上、最も慎重を期すのが「雑収入」の分類です。各都道府県(福岡県や近隣の佐賀県など)の手引きに基づき、細かく判定する必要があります。ここで、いくつか実例を挙げてみましょう。
- 社宅家賃収入の判定:理事長など「役員」から医療法人が受け取る社宅家賃収入は、「その他の収入(課税)」に含めます。しかし、同じ社宅でも「従業員」から受け取る家賃収入は、計算に含めないというルールになっています。
- 補助金の判定:補助金の対象が、診療業務に直接関わりがないもの(例:施設整備に係る補助金など)は、「その他の収入」には含めません。
- その他の特殊な収入:保険を解約した際の戻り入れ収入や、固定資産を売却した際の利益(売却益)も、事業税の計算の基礎となる「その他の収入」には記載しないことになっています。
このように、一行一行の明細を正しく仕分けることで、本来払う必要のない事業税の発生を防ぐことができます。こうした細かい項目の積み重ねが、最終的な按分比率を左右するのです。
MS法人設立の盲点:事業税から見た「逆転現象」のリスク
節税対策としてMS法人(株式会社)を設立し、医療法人からMS法人に外注費を支払うスキームを提案する税理士は多いです。しかし、そこには「事業税の増税」という、実務を知らないと気づけないデメリットが存在します。
シミュレーション:医療法人単体 vs MS法人併用
- ケース①:医療法人単体の場合 医療法人の所得500(すべて保険診療由来)とすると、所得500に対して事業税は1円もかかりません。
- ケース②:医療法人とMS法人を併用した場合 医療法人の所得500のうち、300をMS法人への外注費として支払ったとします。
- 医療法人の所得:200(事業税は非課税)
- MS法人の所得:300(株式会社のため所得300に対して事業税が全額課税される)
医療法人のまま持っておけば事業税がゼロで済んだはずの所得が、MS法人を通した瞬間に「事業税の課税対象」に化けてしまうのです。MS法人を設立して利益を最大化したい場合には、事業税のことも考慮する必要があります。
法人税の「800万円の壁」を意識した戦略
もちろん、MS法人にはメリットもあります。日本の法人税率は、所得が800万円を境に大きく変わるからです。
- 所得800万円以下の部分:低い税率(軽減税率)が適用
- 所得800万円を超える部分:高い税率が適用
医療法人とMS法人に所得を分散させることで、それぞれの法人で「所得800万円以下の低い税率枠」を二重に活用し、法人税率が高い部分を抑えるという効果が期待できます。しかし、この法人税のメリットと、先ほどの「事業税のコスト増」を天秤にかけなければ、真の節税にはなりません。
平井公認会計士事務所では、こうした「隠れたコスト」まで含めたトータルでのシミュレーションを提示し、MS法人を設立することで利益最大化(コスト最小化)ができるのかを提案しています。
福岡県の事業税を支払う場所と滞納の「経営的リスク」
事業税の納付は、福岡県内の金融機関や県税事務所、またはインターネットバンキング(eLTAX)を利用します。
滞納は銀行融資の「死」を意味する
事業税の滞納は、単に延滞金が発生するだけの問題ではありません。銀行融資のストップに直結します。銀行は新規融資や借り換えの際、必ず「納税証明書」を求めますが、未納があれば発行されません。事業税すら払えないという事実は、銀行に対して「経営が破綻している」と宣言しているのと同じなのです。
「うっかり事業税の支払いを忘れていた」ということのないようにしてください。
医療法人専門の税理士に依頼するメリット
医療法人の事業税計算は、一般法人とは比較にならないほど煩雑です。
① 「真の手残り」を可視化する能力
平井公認会計士事務所では、損益計算書(P/L)の表面的な利益ではなく、以下の式で先生の「真の手残り」を算出します。
真の手残り = 事業所得 + 減価償却費(現金支出を伴わない費用) - 銀行元本返済 - 法人税・住民税・事業税
前述の通り、事業税は支払ったときに「別表4」で減算されるため、翌期の税負担を軽減します。この時間差まで考慮し、次年度のキャッシュフローを逆算して設計します。
損益計算書では、事業所得や減価償却費しか見えませんが、この式で計算した金額が先生の真の手取りとなるので、その金額が最大化するようにアドバイスしています。
② 現場の実態を「数字」から読み解く
私たちは、雑収入明細の一行一行まで精査します。役員社宅なのか従業員社宅なのか、補助金の性質は何なのか。医療法人特有のルールを熟知しているからこそ、正当な非課税枠を守り抜くことができます。
また、現場での数字の「異変」を察知し、具体的な改善策を提案できるのも、医療に特化した平井公認会計士事務所ならではの強みです。
まとめ:先生の「理想」を潰させない
クリニックで保険診療のみを行っているのであれば、事業税は非課税です。保険外診療や物販を行っている場合には、その所得に対して事業税がかかります。事業税を計算するときは、利益を保険診療で得られたものと、保険外診療や物販で得られたものを分けて計算します。
MS法人を設立して、医療法人から外注費を支払うことを考えるときは、MS法人に事業税が加算されることも考慮することが大事です。
医療法人の事業税計算は、一般法人とは全く異なる「按分の迷宮」です。しかし、この迷宮を正しく歩むことこそが、無駄な現金流出を防ぎ、内部留保(クリニック内に蓄積された現金)を厚くする唯一の道です。
平井公認会計士事務所は、単なる税金計算屋ではありません。先生の理想とする医療を支え、5年後、10年後の盤石な経営基盤を共に創り上げる「軍師」です。
医師である父が45年かけて築き上げた診療所の経営を、間近で見てきた私だからこそ伝えられる「真実」があります。
「本気で手残りを増やし、盤石な経営基盤を創りたい」 そう決意された先生は、ぜひ一度、私たちの門を叩いてください。
【平井公認会計士事務所へのお問い合わせはこちら】
資金繰りで窮地に立つ前に、なるべくお早目に。先生の理想の実現に向け、今日からクリニック専門の軍師と伴走を開始しませんか?
※ 医科特化のため、歯科の先生は原則対応しておりませんのでご了承ください
(受付時間:9:00~17:30 土・日・祝を除く)


