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【平井公認会計士事務所】
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クリニック経営 成功への道

医療法人設立のタイミングと流れ

医療法人設立のタイミングと流れ

はじめに:医療法人設立は「書類を出せば終わり」ではありません

クリニックの経営が安定してくると、「そろそろ医療法人にしたほうがいいのでは」と考える院長先生が増えてきます。

ところが、実際に法人化に向けて動き出そうとすると、「何から始めればいいのか」「どこに何を出すのか」「いつ法人になれるのか」が分からず、手が止まってしまう方が少なくありません。

株式会社であれば、法務局に登記すれば数日で設立できます。しかし医療法人は、都道府県知事の認可を受けなければ設立できず、しかも申請を受け付ける時期と回数が都道府県ごとに決まっています。福岡県では、年2回だけです。

そのタイミングを逃すと、法人化が半年遅れることもあります。

私(平井)の父は熊本県人吉市で整形外科を個人開業し、その後医療法人化しました。令和8年で開業47年目を迎え、令和6年には兄たちが法人を承継しています。私自身もその医療法人の理事を務めてきましたので、医療法人の設立から承継までを「家族の当事者」として見てきました。また、今まで27件の医療法人化を支援してきました(令和8年10月時点)。

本コラムでは、実務経験をもとに、医療法人設立のタイミングや流れを、必要書類と提出先、福岡県の最新スケジュールまで具体的に解説します。

医療法人と個人クリニックのメリット・デメリット

医療法人設立の流れに入る前に、医療法人と個人クリニックの違いを簡単に整理しておきます。

詳しくは当サイトのコラム「クリニックの医療法人成りとは?法人化のメリット・デメリット」で解説していますので、ここでは要点のみお伝えします。

項目 個人クリニック 医療法人
院長の収入 利益がすべて院長の所得(累進税率で最大55%) 役員報酬として受け取り、給与所得控除(給与にかかる“みなし経費”)が使える
家族への所得分散 専従者給与に限られる 家族を役員にして役員報酬を支払える
退職金 院長本人には支給できない 役員退職金を支給できる
分院展開 できない できる
社会保険 従業員5人以上で健康保険・厚生年金の加入義務(院長本人は国民年金) 院長も含め健康保険・厚生年金が強制加入
事務負担 確定申告が中心 毎年の事業報告書・登記・経営情報の報告などが増える

2つの違いのポイントは、医療法人化は「税金が安くなる手続き」ではなく、利益の受け取り方と事業の器を作り替える手続きだということです。

医療法人化のメリットを最大化できるかどうかは、設立時の設計(役員構成、役員報酬、決算月、健康保険の選択など)でほぼ決まります。

開業当初から?個人を経てから?医療法人化のタイミング

福岡県では「個人で1年以上」が申請の前提

「最初から医療法人で開業したほうが手間がかからないのでは」というご相談をよくいただきます。しかし福岡県では、医療法人設立認可申請の案内において、本申請の受付日時点で個人での医療機関の経営実績が1年以上あることが対象者の要件とされています。

つまり福岡県でクリニックを新規開業する場合、まず個人で開業し、実績を積んでから医療法人化するのが基本の流れになります。

認可要件は都道府県ごとに異なりますので、福岡県以外で開業される先生は、必ず開業予定地の都道府県の案内をご確認ください。

「1年以上」はいつから数える?あまり知られていない実務上のポイント

ここは、ほとんど知られていないポイントです。平井公認会計士事務所が福岡県で数多くの医療法人化手続きを行ってきた経験では、この「1年以上」は、個人診療所を開設するときに保健所へ提出する開設届に記載した「開設年月日」から、設立認可申請の本申請期限までで判断されているのが、令和8年10月現在の福岡県の実情です(あくまで実務上の取扱いであり、今後変わる可能性があります)。

個人診療所では、実際に患者さんの診療を始める日(いわゆる開院日)よりも、開設届の開設年月日のほうが前の日付になることがあります。開設届の日付けを開院日よりも前にしておくことで、開院前に進めておく必要がある「診療所としての手続き」が、前もってできるようになるためです。

医療法人設立には、実際の開院日ではなく、開設届に記載した「開設年月日」が見られます。

例えば、ある年の8月1日を開設年月日として開設届を出し、実際の診療開始は9月20日だったとします。翌年の本申請期限が8月30日だった場合、「診療を始めてからまだ1年たっていないので、今回は法人化できない」と考えてしまいがちです。

しかし、開設届の開設年月日である8月1日から数えれば1年以上となるため、申請の対象になります。

これを知らないと、法人化のチャンスを半年以上見送るという誤った判断をしてしまいかねません。

医療法人化を検討している先生は、ご自身のクリニックの開設届の控えで、開設年月日を確認してみてください。

開業当初から医療法人で始めたい場合

なお、最初から法人の形で開業したい場合は、既存の医療法人を承継(いわゆるM&A)して、その法人で新たに診療所を開設するという方法もあります。

ただしこれは設立ではなく承継の話になり、過去の債務や役員構成の引継ぎなど別の検討が必要です。

クリニックの承継については、「クリニック開業は新規か承継か迷っている先生へ:判断基準を会計士が解説」をご参照ください。

個人で開業してからのタイミングの目安

平井公認会計士事務所では、年間所得が1,500万円を超えてきたら医療法人化を検討する価値が高いとお伝えしています。

これは、先生ご家族の税金・社会保険料・手取りを個人と法人で比較したシミュレーションに基づく実務上の目安です(詳しくはコラム「クリニックを医療法人化するタイミング」をご覧ください)。

あわせて意識したいのが、原則として開業後2年間の消費税の免税期間(一定の条件で短くなる場合があります)です。

法人化の際には、個人が持つ医療機器や内装などを法人へ譲渡しますが、個人が消費税の課税事業者になった後だと、その譲渡に消費税がかかる場合があります。

自費診療の割合が高いクリニックほど影響が大きいため、「開業から何年目の、どの回の申請に乗せるか」を逆算して計画することが大切です。

医療法人設立に必要な書類と提出先

医療法人の設立では、提出先が都道府県だけでなく、法務局、保健所、厚生局、税務署、年金事務所など多岐にわたります。主なものを提出先ごとに整理すると、次のとおりです。

提出先 主な書類 時期の目安
都道府県(福岡県は医療指導課) 事前申込書、設立認可申請書(仮申請・本申請)、定款、設立総会議事録、財産目録・拠出申込書、事業計画書・予算書、役員の就任承諾書・履歴書、診療所の賃貸借契約書の写し など 仮申請~本申請
法務局 医療法人の設立登記申請 認可書の受領後2週間以内
都道府県 登記完了届 登記完了後
保健所 医療法人としての診療所開設許可申請・開設届、個人診療所の廃止届、エックス線装置の届出 など 法人開設前後
地方厚生局(九州厚生局) 保険医療機関の指定申請(遡及指定)、個人の保険医療機関の廃止届、施設基準の届出 毎月の締切日まで
税務署 法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、個人事業の廃業届出書 など 下記参照
年金事務所 健康保険・厚生年金保険の新規適用届、被保険者資格取得届、(医師国保を継続する場合)健康保険被保険者適用除外承認申請書 法人設立後すみやかに(適用除外承認申請は14日以内)

特に時間がかかるのが財産目録と事業計画・予算書

都道府県に出す書類のうち、特に時間がかかるのが財産目録と事業計画・予算書です。

医療法人には、設立後に運営していけるだけの財産を拠出(法人に出資のように財産を移すこと)する必要があり、多くの自治体で「運転資金として、支出の2か月分程度の流動資産」が求められます。

この条件を実現するために、個人時代の決算書をもとに、どの資産を拠出し、どの負債を引き継ぐかを整理します。この作業は、当事務所のような医療法人化に精通した会計の専門家が関わることで、格段にスムーズになります。

税務署関係で期限に注意すべき書類

税務署関係では、次の期限に注意してください。

青色申告の承認申請は、第1期を短く設定した場合に期限が早まるため、特に見落としやすい書類です。

医師国保を法人化後も続ける場合

また、医師国保を法人化後も続ける場合の健康保険被保険者適用除外承認申請書は、事実発生日から14日以内の提出が必要です。

期限を過ぎると、やむを得ない理由がない限り協会けんぽへの加入となり、役員報酬が高い先生ほど保険料負担が大きく変わります。

医師国保は「設立認可の前」に加入していることが前提

ここで見落とされやすいのが、適用除外承認申請の前提です。

福岡県医師国民健康保険組合の案内では、適用除外申請ができるのは、原則として法人の設立認可前から医師国保に加入している方とされています。

個人開業のときに、以前の勤務先の健康保険を任意継続していたり、市町村の国民健康保険に加入していたりして医師国保に入っていない場合は、設立認可の前に医師国保へ加入しておく必要があります。法人化後に協会けんぽに加入してしまうと、そこから医師国保に移ることはできません。

また、医師国保に加入するには、医師会への入会が条件となっている地域もあります。その場合は医師会の入会金や会費がかかりますが、役員報酬に比例して保険料が上がる協会けんぽと比べて、医師国保のほうが保険料が安くなるケースが多くあります。

医師会の費用を含めて、どの程度のメリットがあるかをシミュレーションしたうえで、医師国保を継続するかどうか、つまり適用除外承認申請を行うかどうかを判断することが大切です。

医療法人設立手続きの流れ

福岡県の申請スケジュール(令和8年度第2回)

福岡県では、年2回、説明会を経て設立認可の申請を受け付けています。令和8年度第2回の予定は次のとおりです(出典:福岡県「令和8年度 第2回 医療法人設立の受付及び説明会の開催について」)。

手順 令和8年度第2回の予定 ポイント
事前申込 10月23日(金)まで メールで申込。様式と説明動画のURLが届く
説明会(動画配信) 10月30日(金)まで 認可基準はここで説明される
仮申請 11月13日(金)まで 郵送のみ・最終日消印有効
本申請 12月1日(火)~12月24日(木) 郵送のみ・最終日消印有効
医療審議会 2月頃 ここで認可の可否が審議される
認可書交付 3月下旬 ここから登記などの手続きへ

なお、医科診療所で福岡県医師会の会員、かつ一人医師医療法人を設立予定の方は、県ではなく福岡県医師会への問い合わせ・説明会受講となる点に注意が必要です。

例年のスケジュールは、福岡県「医療法人設立認可申請について」で確認できます。第1回は例年5月頃に案内が始まり、12月下旬頃に認可書が交付されます。

認可から法人での診療開始まで

認可書を受け取った後は、次の順番で手続きを進めます。

  1. ① 法務局で設立登記(この登記の日が法人の設立日)
  2. ② 都道府県へ登記完了の届出
  3. ③ 保健所で診療所の開設許可を受け、開設届を提出。同時に個人診療所の廃止届
  4. ④ 九州厚生局へ保険医療機関の指定申請と、個人の保険医療機関の廃止届
  5. ⑤ 税務署・都道府県税事務所・市区町村、年金事務所などへの届出
  6. ⑥ 金融機関の口座、リース契約、各種契約の名義変更

第2回の申請であれば、認可書交付が3月下旬のため、医療法人としての診療開始は翌年度の4月以降になるのが一般的なイメージです。

令和8年9月から変わった「遡及指定」に注意

個人から医療法人に切り替えるとき、新しい保険医療機関の指定日を個人の廃止日に合わせる「遡及指定」を受けることで、保険診療を途切れさせずに続けられます。

この遡及指定の取扱いは、厚生労働省の通知(令和8年6月5日保医発0605第2号)により、令和8年9月1日から変更されました。

同じ場所で、個人の院長がそのまま理事長となる法人に切り替える場合は、新しい区分では「開設者のみの変更」として扱われ、管理者(院長)が同一であること、標榜診療科を引き継ぐこと、原則として開設者以外の職員を全員引き続き雇用することなどの要件を満たす必要があります。

九州厚生局は事前相談を求めていますので、九州厚生局の案内を確認のうえ、早めに相談しておくと安心です。

設立後に毎年必要になること

医療法人になると、毎会計年度終了後3か月以内に、都道府県へ事業報告書等を届け出るほか、令和5年8月以降に決算期を迎える法人からは、診療所ごとの経営情報等の報告も義務化されています(厚生労働省「医療法人に関する情報の調査及び分析等について」)。

設立時から、これらの報告に対応できる会計の仕組みを作っておくことが重要です。当事務所の医療法人化支援では、これらのことをすべて把握した上で、手続きを行います。

平井公認会計士事務所での支援実績

平井公認会計士事務所は、福岡を拠点に全国の医科クリニックを支援する、医療専門の公認会計士・税理士事務所です。約100件の顧問先の経営データをもとに、医療法人化の「手続き」だけでなく、「法人化した後に先生の手元にいくら残るか」まで設計することを大切にしています。

医療法人化の支援は27件、すべて予定どおりに認可

令和8年10月時点で、平井公認会計士事務所が支援した医療法人化は27件です。この記事を投稿した今現在も、2件のクリニックが法人化に向けて準備を進めています。

この27件という数字は、税理士事務所としてはかなり多い件数です。一般的な税理士事務所では、クリニックの顧問先が1件あるかないか、あっても2~3件というところも珍しくありません。

ましてや、医療法人化の手続きを一度も手がけたことがない事務所も多いのが実情です。

そのため、医療法人化のタイミングで、専門性の高い税理士事務所に顧問先を変更するクリニックも多いです。

これまで支援した設立認可申請は、すべて予定どおりの期限内に認可を受けています。書類の差し戻しなどにより、先生が希望された時期に法人化できなかったことは一度もありません。

福岡県では年2回しかない申請の機会を確実にものにすることが、医療法人化の成否を分けると考えています。

約50項目の「医療法人化チェックリスト」で漏れを防ぐ

医療法人化の手続きを請け負う士業の中には、「設立認可申請書の作成」だけを行うところも少なくありません。

しかし実際には、法人化の影響は医療機関コード、エックス線装置の届出や線量測定、クレジット端末の名義変更など多岐にわたり、銀行、リース会社、社会保険労務士、司法書士、設計会社、医療機器業者、医師会など、関係先は数十か所に及びます。

平井公認会計士事務所では、これらの関係各所に漏れなく連絡し、約50項目の独自のチェックリストで、先生ごとに一つひとつの進捗と完了日を管理していますので、安心して法人化をお任せいただけます。その一部をご紹介します。

段階 チェック項目の例
準備段階
  • 決算月は消費税の免税期間を考慮して決定する
  • 銀行に債務者変更の手数料がかからないか確認する
  • 設計会社へ平面図を依頼する
  • 土地建物の登記簿・役員の印鑑証明書を取得する
  • 医師会の説明会の日程を調整する
申請段階
  • 仮申請・本申請の提出
  • 社会保険労務士へ医師国保継続を依頼する(返信がなければ再送まで管理)
  • エックス線の線量測定を依頼する
  • 看護師・理学療法士など資格者の登録番号を確認する
  • 賃貸借契約を継続する覚書を取り交わす
法人化の前後
  • 医療機関コードが出るまで処方箋のコード欄を空白にする運用を伝える
  • クレジット端末やオンライン資格確認の名義・コードを変更する
  • 個人の最終日と法人1期目の棚卸を行う
  • 結核・難病などの指定医療機関の手続きを行う
  • 郡市医師会へ法人化を報告する
法人化の後
  • 開始時点の残高試算表を銀行へ提出する
  • 生命保険の契約者を個人から法人へ切り替える
  • 役員が立て替えた経費の精算ルールを説明する
  • 個人事業を終えた翌年の所得税の予定納税(前年の所得をもとに前払いする所得税)に備えた資金準備を伝える

特に、医療機関コードの扱いやエックス線の再測定、予定納税の資金準備などは、一般的な手続き解説ではあまり触れられず、実際に法人化した先生が「知らなかった」と困りやすいポイントです。

手続きがすべて終わった後は、提出書類一式をまとめた「法人化申請ファイル」を先生にお渡ししています。

このほか、個人と法人の手取り比較シミュレーション、拠出財産の整理と事業計画書・予算書の作成支援、社員・役員構成と役員報酬の設計(医療法人の「社員」は、株式会社でいう株主にあたる議決権を持つ立場です)、登記を担当する司法書士のご紹介まで、一貫して支援しています。

顧問税理士やコンサルタントに医療法人化支援を依頼する前に確認すべきこと

もし顧問契約している税理士事務所やコンサルタントに医療法人化を依頼することを検討される場合は、「認可申請書の作成だけなのか? 法人化に伴う関係各所への連絡や届出までしてくれるのか?」を、事前に必ず確認することをおすすめします。

父の医療法人を間近で見てきた経験や、多くの医療法人化を支援してきた経験からお伝えすると、医療法人は設立して終わりではなく、10年後、20年後の承継まで続いていく「器」です。だからこそ、設立時の設計がその後の経営を大きく左右します。

まとめ:医療法人設立は「逆算」で準備することが成功のカギ

  • 年間所得が1,500万円を超えてきたら医療法人化を検討する価値が高い
  • 医療法人の設立には都道府県知事の認可が必要で、受付回数は都道府県ごとに異なる(福岡県は年2回)
  • 福岡県では、本申請時点で個人での経営実績1年以上が要件
  • 提出先は都道府県・法務局・保健所・厚生局・税務署・年金事務所など多岐にわたる
  • 令和8年9月から遡及指定の取扱いが変わっており、事前の確認が欠かせない
  • 消費税の免税期間や医師国保の継続など、タイミングと期限で数百万円単位の差が出ることがある
  • 医療法人化の支援を依頼する場合は、認可申請書の作成だけでなく、法人化に伴う関係各所への連絡や届出までしてくれる専門家を選ぶ

「うちは今、医療法人化したほうがいいのか」「次の申請に間に合うのか」と迷われている先生は、ぜひ平井公認会計士事務所の無料の医療法人化オンラインセミナー&個別相談会(1時間ほど)をご利用ください。最初の30分ほどで医療法人化のメリットや流れを解説し、残りの30分で先生の個別のご相談にお答えします。

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(受付時間:9:00~17:30 土・日・祝を除く)

この記事の著者

日本のクリニックが、安心して医療に専念できる未来を。

平井公認会計士事務所
公認会計士・税理士:平井 恵介


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