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【クリニック専門】平井公認会計士事務所|医科特化の経営支援・医療法人化(全国対応)

クリニック経営 成功への道

内科クリニック開業 失敗しないための7つの鉄則

内科クリニック開業 失敗しないための7つの鉄則。なぜ、内科の開業は「他科と同じ」ではいけないのか

理想の医療を実現するために、今まさにクリニックの開業準備を進めている、あるいは地域医療の最前線で日々奮闘されている先生へ。

クリニック経営を安定させるための道のりは、決して平坦ではありません。私はこれまで、多くの先生方の「人生最大の投資」である開業をサポートしてきましたが、内科には内科特有の「戦い方」があります。小児科や皮膚科のように、開院した瞬間に待合室が溢れかえる診療科とは、経営の組み立て方が根本から異なるのです。

内科は「信頼の蓄積」に時間がかかる診療科ですから、患者様が少しずつ増えていくという特性があります。そのため、手堅い事業計画を立てることが基本です。

クリニック開業コンサルタントによっては、資金調達を有利に進めるために、初年度から大幅な黒字になるような「バラ色の事業計画」を立てる人もいます。内科の特性を無視した「バラ色の事業計画」を鵜呑みにして、その計画通りに経営してしまうと、開業早々に深刻な資金繰りの危機に直面します。

本コラムでは、医科クリニック専門の会計事務所としての「現場感覚」をもとに、内科クリニックの開業で絶対に外してはならない7つの鉄則を、どこよりも深く、生々しく解説します。

開業を目指す医師必見!クリニック経営の前に何を勉強すべきか?」と併せてご覧ください。

鉄則1:内科特有の「スロースタート」を前提とした資金計画

内科経営において、最も注意すべきは「売上の立ち上がりの緩やかさ」です。多くのクリニック開業コンサルタントが描く「右肩上がりの綺麗なグラフ」を一度白紙に戻す勇気を持ってください。

損益分岐点までの長い道のり

内科は消化器、循環器、呼吸器など専門領域によって、内視鏡、CT、心リハ室、レントゲンなど必要な設備が異なります。これらの医療機器には、患者様の診察数に関わりなくメンテナンス費などの固定した費用が毎月かかります。

導入した医療機器の固定費を賄うための「損益分岐点(収支トントン)」となる1日外来患者数は、一般的に30人程度が目安となります。毎日30人の診療を行ったとすると、月の売上高(月商)は、

シミュレーション例:30人 × 6,000円(1人単価) × 21日(月診療日数) = 月商378万円

この売上高から、経費となるテナント家賃、スタッフ給与、医療機器のリース代、薬品や検査の材料費を差し引くと、院長の手元に残る生活費はごく僅かです。毎日30人以上を診察することで、院長の給料が出るようになります。

クリニックを開業してすぐに、毎日30人の患者様が来院してくれるようになったらいいのですが、そうはいきません。なぜなら、慢性疾患の患者様は「かかりつけ医」を変えることに非常に慎重だからです。そのため、この「1日30人」に達するまでに1年以上、場合によっては2年以上かかるケースも珍しくありません。

さらに厳しい現実をお伝えします。開業当初の1、2ヶ月は、1日の来院数が1桁(数名)ということも決して珍しくありません。初動で「1日10人」に届かない日々が続く時期をどう耐えるか。これが内科経営における最初の、そして最大の関門です。

「魔の3ヶ月」と源泉徴収の罠

さらに、医療報酬の入金サイクルが、経営者の胃をキリキリと痛ませます。入金サイクルとは、診療をしてから代金が入金されるまでのサイクルです。

患者様が支払った窓口収入はその場で入りますが、健康保険があるため、全額が支払われません。残りの7?9割は翌月10日までに請求したものが、入金されるのは翌々月20日頃です。

つまり、開業から2ヶ月間は、診療をしてもほとんど現金が得られないため、ほぼすべての支出を自己資金から「持ち出し」で運営することになります。さらに残酷なのは、「開業初月は売上そのものが極端に少ない」という事実です。2ヶ月後にようやく振り込まれる最初の診療報酬が、驚くほど少額であることに愕然とする先生も少なくありません。

結果として、開業から丸3ヶ月間は、入ってくる現金が極端に少ない状態が続きます。その上、個人事業主の場合、社保からの振込額からは約10%が所得税として源泉徴収(天引き)されて振り込まれます。額面の9割しか通帳に入らないため、事前の資金計画よりもさらにキャッシュが減るスピードは早まります。この「魔の3ヶ月」を乗り切るための現金が手元にあるか。これが運命を分けます。

テナント家賃、スタッフ給与などの費用を賄う資金のことを、運転資金といいます。鉄則1では、この開業直後の資金繰りの悪さと、運転資金の備えの必要性を知っておいてください。

鉄則2:運転資金2,000万円・手元残高1,000万円の「絶対防衛ライン」

私が提唱しているのは、「運転資金2,000万円以上でスタートしてください」という基準です。

運転資金は基本的に借入金で準備しますが、一般的には内科でも1,000万円ほどで事業計画を立てることが多く、2,000万円で事業計画を立てる開業コンサルタントは少ないように思います。ところが、1,000万円という数字は、内科の立ち上がりにおいては極めて危険な「即死圏内」の水準です。

なぜ「1,000万円」では足りないのか

開業当初、仮に毎月の経費支出が300万円かかるとします。前述の通り売上が伸び悩み、入金が月に100万円しかなければ、毎月200万円の現金が減っていきます。1,000万円の資金は、わずか半年で底をつきます。

通帳残高が300万円を割り込み、翌月の給与や家賃などの支払いが危ぶまれるようになったとき、先生は目の前の患者様に集中し、冷静な診療を続けられるでしょうか。

個人の「1,000万円」が精神的な防波堤になる

事業資金とは別に、個人資産として1,000万円を即座に出せる状態で確保しておいてください。個人資産は、現金が理想的ですが、有価証券のようなすぐに現金化できるものでもかまいません。

開業当初、クリニックの収支が赤字の間は、十分な生活費を引き出せない期間が必ずあります。その際、「いざとなれば自分の貯金から生活費を補填できる」という心理的余裕があるかどうかが、経営判断の質を左右します。

生活費のためにクリニックの通帳から無理な出金をすれば、クリニックの命綱であるキャッシュが失われ、倒産の危険性が高まります。

銀行は「苦しい時の追加融資」に極めて慎重です

開業コンサルタントによっては、「足りなくなったら追加で借りればいい」という提案をする人もいます。しかし、そのような甘い考えは今すぐ捨ててください。

銀行にとって、開業融資を実行してから間もなく(1年未満など)追加融資を依頼することは、「事業計画の精度に重大な問題があった」あるいは「院長の経営能力が欠如している」というレッテルを貼るのと同義だからです。

  • 計画の信憑性の欠如:当初あれほど自信満々に提示した計画が数ヶ月で破綻した事業に対し、銀行がさらなるリスクを取ることは極めて困難です。
  • 稟議のハードル:銀行の担当者が本部の審査部に「なぜ半年で資金が尽きたのか」を納得させるのは至難の業です。
  • 貸し倒れリスクの懸念:早期の資金不足は、銀行の審査部において「回収困難な案件」としてマークされる可能性を飛躍的に高めます。

結果として、最も資金が必要な、喉から手が出るほど現金が欲しい「苦しい時期」に、銀行から「まずは今の収支を改善させてください。今の状態では貸せません」と突き放される。これが、私がこれまで見てきた「金融機関の冷徹な現実」です。

鉄則3:固定費を削り、原価を疑う「コストの適正化」

院長によっては「人生最大の投資」だからと、最新の設備を最初からフルスペックで揃える方もいらっしゃいますが、その必要はありません。経営を圧迫するのは常に「固定費」です。フルスペックの医療機器は固定費が高くなるので、患者様の少ない時期の経営をかなり圧迫します。

装備のミニマリズム(小さく生んで大きく育てる)

エコー、心電図、内視鏡。すべて最新で、かつ複数台を揃えたい気持ちは分かりますが、まずは「1台でなんとかなるものは1個から」スタートしてください。稼働率が100%に達し、物理的に患者様をお待たせするようになって初めて、2台目の導入を検討する。この「慎重な後追い投資」こそが、現金の流れ(キャッシュフロー)を健全に保つ鉄則です。

平井公認会計士事務所のアドバイスによる「原価率の劇的改善」

医療材料や薬品、検査委託費を一社との付き合いだけで決めていませんか? 当事務所では、顧問先の試算表をチェックする際、必ず原価率を精査します。

ある先生のケースでは、先代からの付き合いで、長年一社からのみ購入されており、明らかに原価率が高い状態でした。そこで私から「他社との相見積もりをとってください」と強くアドバイスし、実際に実行していただきました。結果、全く同じ内容でありながら年間400万円程度のコストダウンに成功したのです。

年間400万円のコストダウンができると、個人事業主の院長の場合は、年収が400万円増えることを意味します。

院長が多忙を極める診療の合間にこれだけの利益を積み上げるのは大変ですが、仕入れ先を見直すだけでこれだけの「現金」が残るのです。卸業者に「平井公認会計士事務所が常に数字を見ている」という緊張感を持たせることは、経営者の重要な責務です。

鉄則4:最初から「正当な対価」を請求する意識

「患者様に申し訳ないから加算を控える」「検査を最小限にする」という先生がいらっしゃいますが、これは「優しさ」ではなく、クリニックを死に至らしめる「経営放棄」です。クリニックが倒産してしまったら、患者様やスタッフの方々などに迷惑をかけてしまいます。

スタッフの幸せとクリニック存続のために

適正な診療報酬を算定しないということは、本来得られるべき利益を自ら捨てているのと同じです。そのしわ寄せは、真っ先にスタッフの給与、賞与、福利厚生に行き着きます。適切な対価を得ていないと、スタッフに十分な報いを与えることができず、離職が相次ぎます。

給与が低いと新しい採用も困難になり、最終的にはクリニックの存続自体が不可能になります。

「やるべき検査をしっかり行い、患者様に納得・安心していただき、国が定めた適正な料金をいただく」ことは、良質な医療チームを維持し、患者様を守るための絶対条件なのです。

「後出し」による信頼失墜の回避

開業して数年経ち、経営が苦しくなってから「これまで取っていなかった点数や検査」を増やそうとすると、既存の患者様は「最近ここは高くなった」と非常に敏感に反応します。開業初日から、算定すべき点数はすべて正当に、堂々と請求する。このスタンスを貫くことが、結果として患者様との長期的な信頼関係の基礎となります。

鉄則5:認知度を高める「開業前」の戦略的仕掛け

内科クリニックは、待っていても患者様は来ません。開業の半年から1年前から、地域への「認知」が必要です。

デジタルの「先行投資」によるプロモーション

ホームページは開業の6ヶ月前には公開し、「先生の専門領域は何か」「どんな想いでこの地を選んだのか」を地域住民に知らせてください。ブログやSNSで先生の人間性を発信することも重要です。

今は、患者様がスマホで検索し、納得してから来院する時代です。ホームページのSEO(検索エンジン最適化)による上位ヒットは、一朝一夕には成し遂げられません。上位ヒットするようになるまでに少なくとも半年、通常は1年ほどかかります。

また、開業直前になるとGoogleマップに自院を登録することも必須です。

泥臭いアナログ戦と「予約」の最大化

近隣の商店主や町内会長、マンションの管理人さんへの挨拶回りは、現代でも効果絶大です。また、開業直前の内覧会では、単に見学してもらうだけでなく、その場で「特定健診の予約」や「カメラの事前予約」を取る導線を完璧に設計してください。

内覧会の翌日に「予約ゼロ」で開業するのか、「すでに数十人の予約がある」状態でスタートを切るのか。その後の経営の勢いが全く変わります。

鉄則6:「開業時間の差別化」による集患戦略

診療内容の差別化は、患者様には伝わりにくいものです。しかし「開業時間」の差別化は誰の目にも明らかで、かつ強力です。

「あそこに行けば開いている」という差別化

近隣の内科が閉まっている18時?20時の夜間診療、あるいは土曜午後や日曜診療。「どこも開いていない時に、あの先生だけは診てくれた」。この安心感こそが、患者様を一生の「ファン」に変える瞬間です。

軌道に乗るまでは、たとえ先生お一人(ワンオペ)で対応してでも、地域で「一番頼りになる時間帯」を確保する戦略を強くお勧めします。時間外加算や休日加算は単価アップにも寄与し、経営を強力にバックアップします。

特に、人通りが多い場所では、開業時間の差別化は有効です。事業計画を立てるときに、近隣の内科クリニックの開業時間やニーズなどをマーケット分析し、独自の開業時間を設定することで、開業直後でも圧倒的に集客ができることもあります。

鉄則7:公民館セミナーと「信頼の貯金」

内科経営のゴールは、地域住民の「かかりつけ医(ホームドクター)」としての地位を不動のものにすることです。

地道な「健康セミナー」が結ぶ縁

地域の公民館での健康セミナー。参加者がたとえ1人、2人でも、全力を注いでください。そして、1人でも多くのファンをつくってください。

ある私の顧問先の先生は、開業当初、1日の患者数が数名という非常に厳しい時期が続きました。しかし、このセミナーをコツコツと継続した結果、2年後から口コミで患者様の数が爆発的に増加し、今では地域で最も安定した経営を誇るクリニックになっています。

リピーター=ファンの創造

会計時に「お困りごとはありませんか?」と一声添える、クリニック名入りのティッシュやパンフレットを渡す。こうした小さな接触の積み重ねが、患者様の家族や友人へと伝わり、広告費に頼らない「紹介の輪」を作ります。

ビジネスの本質は新規の数だけではなく「リピートを多くつくること」です。一人ひとりを丁寧に診ることが、最強の集患対策なのです。

知っておきたい「税務・会計」重要キーワード

損益分岐点(そんえきぶんきてん)

売上と経費がトントンになるライン。売上高が、ここを超えるまでが「勝負の期間」です。

キャッシュフロー(現金の流れ)

診療をして利益が出ていても、現金の入金までに時間がかかるので、通帳からお金がなくなるのが医療経営の罠です。利益と現金の動きは一致しません。

減価償却費(げんかしょうきゃくひ)

高額機器の購入費を数年に分けて経費にする仕組み。初年度は「機器代のお金は出たのに経費にならない」ため、税金負担が予想以上に重くなる原因になります。

おわりに:クリニック経営の「かかりつけ医」として

私は、19床の有床診療所を開業した父の背中を見て育ち、現在は兄たちがそれを継承している「医療一家」の出身です。クリニック経営の「光」だけでなく、資金繰りに悩み、孤独に耐える経営者としての「影」も、身近で共有してきました。

税理士や会計士の資格を取得して経験を積み、医科クリニック専門の公認会計士事務所を開所し、約100件のクリニック開業支援を行った実績があります。この実績は、約100人の先生とご家族の「人生」を背負ってきた証です。内科クリニックの開業は、このブログ記事で解説したような、正しい財務戦略と現場感覚があれば、必ず成功させることができます。

もし、内科クリニックの開業を控えて不安がある、あるいは現在の経営をより良くしたいとお考えであれば、ぜひ一度私にご相談ください。先生が理想とする医療を、揺るぎない経営基盤の上で実現できるよう、私が全力で「経営の参謀」を務めさせていただきます。

【平井公認会計士事務所・お問い合わせ】

当事務所は「医科特化」のプロフェッショナル事務所です(歯科は対応しておりません)。

「コラムを読んだ」と一言添えていただければ、スムーズな対応が可能です。

経営相談・シミュレーションのご予約

092-707-3678

(受付時間:9:00~17:30 土・日・祝を除く)

この記事の著者

平井公認会計士事務所
公認会計士・税理士:平井 恵介


医療機関・クリニック専門の経営支援・会計事務所
(福岡県福岡市/オンライン全国対応)

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