整形外科開業の2億円投資を成功させる!会計士が教える7つの鉄則
- 2026.02.9|クリニック経営 成功への道

整形外科の開業は、医師としての高い技術はもちろんのこと、数億円という巨大な資本を動かし、数十名のスタッフを統率する「経営者」としての真価が問われる診療科です。
一般内科クリニックを開業するときの投資額は1億円ほどですが、整形外科の開業投資額が2億円に達することは珍しくありません。広いリハビリ室の確保、多職種にわたるスタッフ雇用、そして高額な医療機器。この巨額な資金を投じる際、多くの先生は「最新の設備さえあれば患者は来る」と考えがちですが、そこには経営の落とし穴があります。
この高額な投資が「重すぎる借金」になるか「利益を生む資産」にできるかは、開業前の冷徹な財務判断と、現場の実態に即した戦略があるかどうかにかかっています。
私はこれまで、公認会計士として100件近いクリニックの開業支援を行い、その後の税務・経営支援に一貫して携わってまいりました。
1日200名以上の外来を支える顧問先をいくつも持つ当事務所の実務データに基づき、2億円規模の巨額投資を成功へと導くための実戦的な鉄則を、圧倒的なボリュームで解説します。
整形外科クリニックを開業させたいと考えている先生は、ぜひ最後までお読みいただけたらと思います。
鉄則1:事業計画の精度を高め、自己資金と融資を盤石にする
整形外科は内装費や機器代などの設備投資額が、他の医療分野よりも大きく、毎月必要となる運転資金も膨大です。そのため、銀行から満額融資が下りるとは限らないという現実を直視しなければなりません。
1. 「自己資金」は信頼のバロメーター
融資を受ける際、金融機関は先生が自己資金を準備しているか、「計画性」や「意欲」の証明として非常に重視します。
- 理想と最低ラインの金額:少なくとも融資総額の1割(2億円なら2,000万円)を自己資金として準備していただくのが理想です。
- 準備が困難な場合の対応:もし2,000万円の準備が困難な場合であっても、銀行側の安心材料として、最低でも1,000万円はご準備できるように努めてください。この蓄えが、開業後の資金ショートリスクを低減させます。
資金ショートとは、現金を使い果たしてスタッフの給料や仕入れの支払いができなくなってしまうことです。自己資金を多く準備することは、失敗のリスクを減らすことができます。
2. 「命の運転資金」を削らない
金融機関からは、クリニックを開業させるときの費用と、開業後の運転資金を融資してもらいます。開業直後は売上が少しずつ増えていくため、支出の方が多くなり赤字になります。その赤字を運転資金のストックから支払います。それがゼロになったら倒産です。
投資総額が膨らむと設備を優先して運転資金を削ろうとする先生がいますが、これは極めて危険です。
- 確保すべき額:最低でも2,000万円、できれば2,500万円は「運転資金」として現金のまま確保することを強くアドバイスしています。
- 赤字期間への備え:整形外科は固定費が重いため、開業当初の患者数が少ない時期のキャッシュ流出は激しいものです。この「命の現金」が、売上が安定するまでの防波堤となります。
3. 返済計画は「超長期」で組む
借入金の返済期間は最長(15~20年)を目指し、開業後1年間は利息のみを支払う「元本据置」を活用してください。これにより、売上が安定するまでの期間、手元の現金を温存することが可能になります。
手元になるべく多くの現金を温存しておくことが、倒産のリスクを下げることにつながります。
鉄則2:MRI投資の「不都合な真実」と戦略的選択
大学病院等で当たり前のように使ってきたMRIは、クリニック経営の現場では「巨大な固定費の塊」へと変貌します。固定費とは、患者さんを診療しなくても固定で毎月のように出ていく費用のことです。MRIの保守等による固定費が増えると、その費用を回収して黒字化するためにMRIを使った診察をたくさん行い、たくさんの売上高を得る必要があります。
1. 1.5テスラMRI導入と回収の冷徹な計算
新品の1.5テスラMRIを導入する場合、現在のところ本体代と工費で約1.5億円が必要です。
- 月々の維持コスト:MRI本体の保守料と撮影を担う放射線技師の人件費を合わせると、毎月約100万円近い固定費が、患者がゼロの日でも発生します。
- 10年回収のデッドライン:新品のMRIを導入し10年間使用することを想定し、月20日診療として10年で割ると、初期投資の返済原資125万円と維持費100万円を合わせ、毎月225万円以上のMRIによる売上を上げなければなりません。
- 1日5名の重圧:その金額を1件当たり約19,000円の診療単価で計算すると、毎日5名以上の撮影が「最低ライン」です。初年度からこれを毎日コンスタントに達成するのは、現実的にかなり難しいものです。開業後1年間ほどは患者さんの数が少ないので、1年目に達成できなかった分を2年目以降に取り返すとなれば、現場への負担はさらに増大します。
- 買い替えのリスク:10年~15年が経過すれば、再び高額な費用をかけて買い替える時期がやってきます。この投資サイクルを考慮すると、高額なMRIの導入には慎重な検討が不可欠です。
2. 「持たない経営」という戦略
どうしても院内にMRIが必要な理由が明確でない限り、「近くの脳神経外科や総合病院へ撮影を委託する」という選択を検討してください。自前の購入による経営リスクを避け、固定費を抑えることでなるべく少ない患者数でも黒字化することが、不確実な開業初期を生き残る賢い戦略です。
また、クリニックモールの場合、MRIを持つ脳神経内科が入っている物件は理想的です。自前で購入する必要もなく、相互に患者を紹介し合える良好な関係を築けます。
鉄則3:駐車場と動線が「1日200名」の患者を支える
1日200名以上の外来を支える顧問先の事例に共通しているのは、「駐車場」と「動線」への徹底したこだわりです。動線とは、クリニック内の患者さんやスタッフの動線のことです。
1. 駐車場は経営の生命線
整形外科の患者さんは足腰が不自由な方が多く、車での来院がメインです。
- 駐車台数の確保:診察、レントゲン、DXA、リハビリと滞在時間が長いため、駐車場が長く占拠されます。駐車できる台数は余裕を持って確保し、将来的に拡張できる余地がある場所が理想的です。
- アクセスの良さ:駐車場から診療所までの距離が遠いショッピングセンターのテナントなどは不便であり、患者さんから敬遠される要因になります。入り口のすぐそばに駐車できる環境が望ましいです。
2. 効率を極める「1フロア・3本柱」の動線
診療・検査・リハビリスペースは、可能な限り1フロアにまとめるべきです。エレベーター移動は患者さんの移動に時間を要し、リハビリが効率的に開始できず、時間の割に単位数が稼げない要因となります。
- 3本柱の最大活用:医師の診察、DXA(骨密度測定)、リハビリの3本柱を最大活用する設計が、高い患者満足度と高収益を実現します。
私は図面作成の知見は持ち合わせておりませんが、1日200名以上を診る整形外科の設計を熟知した専門の設計士・設計会社をご紹介可能です。
鉄則4:理学療法士(PT)のマネジメントと「単位数」の最大化
整形外科経営は、PTを中心としたスタッフ管理と、リハビリテーションの効率的な運用がすべてと言っても過言ではありません。
1. リハビリテーションの効率化と工夫
PTによる個別リハビリは「1単位20分」と定められており、1人につき週108単位までという上限があります。この限られた時間内でいかに効率よく、かつ質の高い施術を提供できるかが経営の要です。
- リハビリ助手の活用:PTが移動や記録などの事務作業に追われるのは非効率です。リハビリ助手が患者さんの移動補助や準備を行い、PTは施術に専念できる環境を整えることで、1日の単位数を最大化させる工夫が必要です。
- PTの心理と組織管理:PTは自分たちがいくら売上(点数)を上げているか明確にわかる職種です。看護師や事務と違い、売上を直接稼ぐ自負があるため、「自分たちがクリニックを支えている」という意識から高慢になりやすく、他部署よりも自分たちが一番偉いという状況にもなりやすい傾向があります。すると、クリニック内の人間関係がギクシャクしやすくなり、組織崩壊を起こすことにもつながります。
- チーム医療の質:PTトップの人間性、教育力、理念(リネン)の共有は、組織崩壊を防ぐために極めて重要です。
2. 副業・個人事業主としての要望への対応
最近では、PTが休日や診療外の時間に「個人事業主として活動させてほしい」「クリニックのリハビリスペースを使わせてほしい(売上の数%を還元する)」といった提案をすることがあります。そのような提案があったときの対応をあらかじめ考えておくことが大切です。
- 責任帰属の問題:クリニックのスペースでPTが個人事業主として仕事をしている際、事故や患者さんへの損傷が発生した場合、責任の所在が極めて曖昧になり、クリニックが連帯責任を問われるリスクがあります。
- 方針の明示:トラブルを防ぐため、採用時に「クリニックの設備を利用した個人活動の可否」について、責任帰属を含めた方針を明確に示しておくべきです。
3. 引き抜きと採用コスト
勤務先の病院からPTを引き抜く際は、雇用条件を厳密に詰めてから声をかけてください。
また、求人募集をしても応募が来ないリスクを考慮し、紹介会社への依頼も検討すべきですが、その場合は高額な紹介手数料がかかるので、あらかじめ事業計画に含めておく必要があります。
鉄則5:DX導入で「待ち時間」と「会計」のストレスを解消する
患者数が増えるほど、待ち時間や会計の滞留が顧客満足度を下げ、スタッフを疲弊させます。
- システムの導入:多くの患者さんをスムーズに診るために、自動精算機、自動釣銭機、WEB予約・WEB問診システムの導入を強くお勧めします。
- 補助金の活用:これらの導入は、業務効率化だけでなく補助金の対象となる場合もあります。
鉄則6:診療報酬算定の「埋没利益」を掘り起こす
2億円の投資回収には、開業前に具体的な数字で緻密にシミュレーションを重ねて事業計画を立てることが必要ですが、開業後は事業計画通りに収益が得られるようにするための緻密な収益管理が必要です。
- 算定漏れのチェック:当事務所は診療報酬算定に精通したエキスパートと提携しており、顧問先の算定漏れを発見し、収益を大幅に改善した実績がいくつもございます。
- 院長の関与:運動器リハビリテーション料や各種加算の要件を事務スタッフ任せにせず、院長自身が把握することが、強固な経営基盤に繋がります。
鉄則7:会計士を軍師とし、キャッシュと内部留保を最大化する
私たちの本分は、単なる税金計算ではなく、収益管理等の数字を通じて先生の「キャッシュ(現金)」を守ることです。キャッシュを守ることが、ひいてはクリニックの安定経営につながります。
1. 「節税」の罠と資金繰り
多くの税理士は、緻密な収益管理を行わずに利益が出そうになったら安易な節税(不必要な経費支出)を勧めることがあります。安易な節税は現金を流出させ、かえって資金繰りを悪化させる「罠」になり得ます。
- 現金の価値:1万円を経費で使えば、税金は数千円減りますが、手元の現金は1万円なくなります。整形外科のような巨額投資を行う経営者にとって、最強の防御は「手元の現金」です。
過度な節税によってクリニックの経営が不安定になったのでは本末転倒です。先生が小事と大局を見誤らないように支援することも、会計士の役割です。
2. 内部留保の戦略的重要性
私はクリニックの経営状況を総合的に判断した上で、節税するべきかどうかを判断していますが、基本的には「税金を払ってでも手元に現金を残す(内部留保)」スタンスを重視します。大きな投資と経費がかかる整形外科では、なおさらのことです。
- 将来への投資:税引後の利益を内部留保として積み上げることが、将来への投資となります。将来の医療機器更新、スタッフへの還元、そして先生自身の退職金の原資となるからです。
- 経営の安定性:内部留保が多いクリニックは、赤字の時期や不測の事態でも迅速に対策を打つことができ、真に安定した経営が可能になります。資金繰りが悪化したときに、金融機関に相談してもすぐに現金が融資されるとは限りません。
結び:理想の経営を支えるパートナーとして
整形外科の開業は、地域医療への貢献と、巨大な経営リスクが背中合わせの挑戦です。平井公認会計士事務所は、医科特化のプロフェッショナルとして、先生の理想を「数字」と「戦略」で形にします。
- 整形外科の開業を成功させる精緻な事業計画を作りたい
- すでに整形外科クリニックを開業させているが、診療報酬の算定漏れがないか、プロの目で見てほしい
- 1日200名以上を診るための専門設計会社を紹介してほしい
先生の最良のパートナーとして伴走いたします。まずは一度、先生の描く未来をお聞かせください。
オンライン面談にて全国のクリニックに対応可能です。まずは下記のお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
(※「整形外科開業のコラムを読み、具体的なシミュレーションを希望」とお書き添えください)
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